瀬戸内海に浮かぶ大小さまざまな島は、そのプロフィールもさまざま

仕事などで遠方に行くときは、せっかくなので自分の作品撮りをするために寄り道をすることが多い。

広島県の三原を訪れたのも、九州での撮影の帰り道。モーターパラグライダーで離陸できそうな場所があったので、空撮していくことにした。

もともとここで空撮するつもりだったわけではないので、風の具合など問題ないかの確認をしながら、どこを目指して何を撮るかも決めず、とりあえず飛んでみる。

離陸して高度を上げていくと、広島県と愛媛県の間の、瀬戸内海に浮かぶ大小さまざまな島が次々と見えてきた。

車で海岸線の道路を走っているときに見えていた対岸の陸地は、広々として島には思えなかったのに、上から見ると実は大きな島だった。

深い藍色をした穏やかな海の上で、島々の間を船が行き交っている。ちょっとガスっている影響もあって四国本土までは見えず、瀬戸内海は思った以上に大きいんだなと感じた。

三原市の南側、瀬戸内海の上空から東の尾道方向の眺め。
三原市の南側、瀬戸内海の上空から東の尾道方向の眺め。
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本州側では大きな造船所が目立つ。その先には霞んで尾道方面が見えた。

西側を振り返ると、かつて毒ガスを製造していた大久野島がある。この島は第二次世界大戦時、軍事機密として地図から消されていたという。飛んでいるときにはそんなことは知らずに写真を撮っていた。あとで知り、写真を見返してみると、火力発電所跡や毒ガス研究室跡らしきものもうっすらと写っていた。

行き当たりばったりで飛び、空撮してみたら思いがけずおもしろいものが撮れていた、というのもモーターパラグライダー空撮ならではだろう。

写真中心部にあるのが大久野島。毒ガス工場があった時代は、その製造過程の事故で多くの犠牲者が出た。いまはうさぎの島としても知られる。
写真中心部にあるのが大久野島。毒ガス工場があった時代は、その製造過程の事故で多くの犠牲者が出た。いまはうさぎの島としても知られる。

取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2024年8月号より