かつて住んでいた身近な町を空から眺める不思議

作品撮りや仕事でモーターパラグライダーで飛行をするときは、自宅から何時間もかけて車で移動をし、基本的には自然の中で空撮する。

しかし、エンジンやグライダーなど機材のチェックや、飛行練習をするために飛ぶ場合は、埼玉の荒川河川敷にあるモーターパラグライダー専用のエリアから飛ぶことが多い。そのエリアは以前住んでいた埼玉県戸田市から直線距離で10㎞ほどの場所にある。

身近な市街地である戸田を被写体として考えたことはなかったのだが、引っ越して戸田を離れてから、かつて住んでいた場所を空から眺めてみようと思った。

河川敷から離陸して川沿いに飛んでいくと、『彩湖・道満グリーンパーク』が見えてきた。家族でよく遊びに来た場所で、自宅からは自転車でも来られる距離だった。

さらに進んでいくと戸田ボートレース場が見える。このあたりはランニングコースとしていつも走っていたあたり。

「彩湖・道満グリーンパーク」 にはスポーツ施設のほか、バ ーベキュー場や遊具など子ど もが遊べるスペースも多い。
「彩湖・道満グリーンパーク」 にはスポーツ施設のほか、バ ーベキュー場や遊具など子ど もが遊べるスペースも多い。
illust_12.svg

東側に目を向けると、普段買い物に行っていたスーパーや、最寄り駅だった戸田駅のほうまで見える。

子どもが通った保育園や小学校、よく遊びに行った近所の公園なども空から探してみよう。あとから家族と一緒に写真を見ながら懐かしむのもおもしろいな、と思いながら空撮飛行をする。

雄大な自然を相手に撮影を続けている身としては、自分の生活圏だった場所を空から見るのはちょっと不思議な感覚だった。いつもと違う視点で景色を見るフライトもいい。

戸田市からさいたま市中央区へと続く首都高速埼玉大宮線の向こう側に、さいたま新都心のビル群が見える。
戸田市からさいたま市中央区へと続く首都高速埼玉大宮線の向こう側に、さいたま新都心のビル群が見える。

取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2024年7月号より