太平洋に注ぐ河口から、源流の山々を望む
北海道には定期的に飛びに行く。今回向かった十勝川河口付近の豊頃町は、牛や馬のいる牧場が多い。動物たちを怖がらせないため、いままではモーターパラグライダーでの飛行は控えていた。
だが今回、地元のフライヤーの方からも情報をもらい、迷惑にならない範囲で飛行し、空撮を行った。
十勝川河口付近から離陸し、海岸線である程度高度を上げてから川に沿って飛んでいく。
海とつながる河口部分は砂礫(されき)が蓄積し不思議な形の砂州(さす)となっていた。川の周辺には牧場や畑が広がっているのだが、その合間をくねくねとした小さな川が流れている。蛇行した川が切断されてできた三日月沼の形も上空から見るとおもしろい。
牧草地帯には草が刈られて丸められた牧草ロールがぽつんぽつんと転がっており、そこだけ切り取るとアーティスティックな絵画のようだ。
十勝川は河口から蛇行しながら内陸に伸びているのだが、途中から真っすぐになっている。
このあたりは治水事業で人工的に川の形が大きく変えられているのだ。人工的に掘られた河川とはいえ、90年ほど前に作られた統内新水路はもはや自然の一部になっているように感じた。
北西方向には大雪山系がうっすらと霞んで見える。全長156kmの十勝川の水源となる十勝岳連峰も見えた。今回は高高度までは上げず500mほどの高さで飛んでいたが、それでも十分地球を感じる、北海道ならではのダイナミックな景色を堪能することができた。
取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2023年10月号より