illust_14.svg

1.クライネ・シャイデック~ヴェンゲルンアルプ

この旅で最初のハイキングだったこともあり、このコースは忘れられない。

ラウターブルンネンから乗ったヴェンゲルンアルプ鉄道。車窓を眺めていると、周辺の花がすごい。というわけで急遽、クライネ・シャイデックで降り、ひと駅手前のヴェンゲルンアルプまで歩いて下ることにした。こういう突発的なことができるのも、ハイキングコースの充実しているスイスの素晴らしさ。

アイガー、メンヒ、ユングフラウの三山の大迫力、そして色とりどりに咲く高山植物、気持ちよさそうに草を食む牛たち——。

これぞスイスという圧倒的なシーンを見てしまった。ずっとここにいられる。後半、湖に映るリフレクションにも心を奪われ、もう帰りたくないという状態に。

ちなみに、スイスの人たちは圧倒的に上りが好きなのだそう。だから下るコースは人が少なかったりする(笑)。

ヴェンゲルンアルプ鉄道は進行方向右側に座ろう。すぐにこんな景色が広がる。
ヴェンゲルンアルプ鉄道は進行方向右側に座ろう。すぐにこんな景色が広がる。
ユングフラウを横に見ながら下っていく。スキップしたくなるような道♪
ユングフラウを横に見ながら下っていく。スキップしたくなるような道♪
景色のいいところにベンチがある。これもスイスのハイキングコースの特徴。
景色のいいところにベンチがある。これもスイスのハイキングコースの特徴。
高山植物の花畑に牛と山……。これぞスイス!
高山植物の花畑に牛と山……。これぞスイス!
illust_7.svg

2.フィルスト~バッハアルプゼー

ユングフラウ地方の拠点・グリンデルワルトからロープウェイで向かったのは、フィルスト。ここにはレストランと展望テラスのほか、「フィルスト・クリフウォーク」というスリル満点の展望回廊もある。2023年の夏には、新しい展望台「フィルスト・ビュー」もできた。

展望台からは名峰・アイガーをはじめ、ベルナーアルプスの山々が見渡せるが、そこからさらに先、“アルプスの宝石”とも呼ばれる山上湖・バッハアルプゼーを目指す。

最初はやや上りのスロープ、やがて平坦になり、しばらくなだらかな道が続く。コースの左側には、遠く下方にグリンデルワルトの谷、その上にはヴェッターホルン、シュレックホルン、アイガーなどの眺め。スイスにいるんだ、という実感が湧いてくる。

周辺の牧草地には小川も流れ、可憐な高原植物があちこちに。1時間ほどで山上湖が見えてきた。

バッハアルプゼーは小さな2つの湖がつながっている。風のない穏やかな早朝や夕暮れには、湖に閉じ込められた山々が見られる。どん曇りの湖で少し待っていると、シュレックホルンが姿を見せてくれた。形のいい尖った山には、なぜか惹かれてしまう。

こういう標識が立っているので、コースがわかりやすい。
こういう標識が立っているので、コースがわかりやすい。
振り返ると、ヴェッターホルン(左)とシュレックホルン。
振り返ると、ヴェッターホルン(左)とシュレックホルン。
バッハアルプゼーはすぐそこ。多くのハイカーでにぎわう。
バッハアルプゼーはすぐそこ。多くのハイカーでにぎわう。
曇ったり晴れたり。でも、シュレックホルンがしっかり姿を見せてくれた。
曇ったり晴れたり。でも、シュレックホルンがしっかり姿を見せてくれた。
コース脇に雪が残っていて、犬たちは大はしゃぎ。
コース脇に雪が残っていて、犬たちは大はしゃぎ。
illust_14.svg

3.リッフェルベルグ~リッフェルゼー

一番楽しみにしていたのが、マッターホルンのご来光。

ツェルマットの村からも見られるが、せっかくならもっと近くで、さらにリッフェルゼーで逆さマッターホルンも、というよくばりな計画なので、ゴルナーグラート鉄道のリッフェルベルグ駅そばに立つ『ホテル リッフェルハウス 1853』に泊まる。

ここはもちろん、スイステナブルの認証ホテルだ。山の宿とは思えない客室にレストラン、バルコニーからはマッターホルンを独り占め。そして、極めつきはサウナとジャグジー。ここがもう……ため息ものだった。

翌朝は3時過ぎに起きて、4時には宿を出発。真っ暗ななか、ヘッドランプの明かりを頼りにリッフェルゼーへ向けて歩き出す。途中で道がわからなくなり、少し迷ってしまったが、なんとか5時半にはリッフェルゼーへ到着。

湖にはカメラを構えた人がいるだろうと思っていたのに、なんと貸切。ほの暗いうちはマッターホルンの形がきれいに見えたが、日が当たってくると頂上付近に雲が出てきた。それでも、雨女の私にとっては上出来。湖面にもかろうじて名峰が映っている。

待つこと40分、山頂あたりの右側がほんのりオレンジ色に染まり、周りも明るくなってきた。なんて神々しい。一日の始まりってこんなに清々しいんだなと、改めて。あぁ、早起きしてよかった~。

リッフェルベルグ駅からすぐの『ホテル リッフェルハウス 1853』。
リッフェルベルグ駅からすぐの『ホテル リッフェルハウス 1853』。
『ホテル リッフェルハウス 1853』のサウナとジャグジー。贅沢すぎる眺め……。
『ホテル リッフェルハウス 1853』のサウナとジャグジー。贅沢すぎる眺め……。
『ホテル リッフェルハウス 1853』のバルコニーから、夜のマッターホルン。
『ホテル リッフェルハウス 1853』のバルコニーから、夜のマッターホルン。
リッフェルゼーで日の出を待つ。日が昇ってきたら、雲が出てきた。
リッフェルゼーで日の出を待つ。日が昇ってきたら、雲が出てきた。
横に目をやると、ブライトホルン(右)も真っ赤に染まっている。
横に目をやると、ブライトホルン(右)も真っ赤に染まっている。
ホテルに帰る途中、マーモットが横切っていった。警戒心が強いので、なかなか近づけない。
ホテルに帰る途中、マーモットが横切っていった。警戒心が強いので、なかなか近づけない。
illust_7.svg

4.スネッガ4湖めぐり

ツェルマットの村から一番近いスネッガ展望台へは、ケーブルカーでわずか3分。周辺には5つの山上湖があり、ここをめぐるコースが人気だ。今回は時間の関係で、4つの湖をめぐることに。

1つめはシュテリゼー。ここへ下っていく途中、野生のエーデルワイスを発見してしまった! 紫のアルペン・アスターが咲くところには、エーデルワイスがあると聞いていたので、アルペン・アスターを見つけたときに、もしかしたらと思ったら……。まさか本当に咲いているとは! にわかに信じられなかったが、ホンモノなんだ、と感動を噛みしめる。

シュテリゼーはゴツゴツした岩があり、堂々とした姿。マッターホルンと逆方向には、山小屋レストラン「フルーアルプ」も見える。

2つめはグリンジーゼー。レルヒ(カラマツ)に囲まれた静かな湖だ。逆さマッターホルンを眺めて、しばしひと休み。秋にはレルヒが黄色からオレンジに染まり、それは見事なのだそう。紅葉も見てみたいな。

3つめはモージーゼー。ここはなにやら、ほかの湖と色が違う。エメラルドグリーン? ミルキーブルー? 顔と足が黒い、モコモコのかわいいヒツジ(ヴァリサー・シュヴァルツナーゼンシャーフ)がいっぱいいた。

このあと、小さな山岳民族の村・フィンデルンでのんびりしてしまったので、時間がなくなり、最後のライゼーは駆け足で。湖畔に遊具などがあり、家族連れでも楽しめそうだ。

それぞれ湖の表情が違うので、自分の好きな湖を見つけてみては。

ありがたい標識。およその所要時間などもわかる。
ありがたい標識。およその所要時間などもわかる。
アルペン・アスターがあるということは……。
アルペン・アスターがあるということは……。
見つけちゃった、エーデルワイス!!
見つけちゃった、エーデルワイス!!
中央に見えるのがシュテリゼー、奥に立つのが山小屋レストラン「フルーアルプ」。
中央に見えるのがシュテリゼー、奥に立つのが山小屋レストラン「フルーアルプ」。
グリンジーゼー。このあたりは、赤いシュピンヴェプ・ハウスヴルツが多く咲いていた。
グリンジーゼー。このあたりは、赤いシュピンヴェプ・ハウスヴルツが多く咲いていた。
モージーゼーの湖畔で一心不乱に草を食む、もこもこヒツジ。
モージーゼーの湖畔で一心不乱に草を食む、もこもこヒツジ。

おまけ.エッギスホルン

アルプス最長・最大を誇るアレッチ氷河を見るため、フィーシュからロープウェイを乗り継いで、エッギスホルン展望台へ。ここからの眺望でも十分満足だが、目の前に見えるエッギスホルンに登れば、もっと氷河に近づけるという。これは登るしかない!

山頂には十字架が立っていて、岩山なのもあり独特の景観だ。20分ほど登って山頂に到着。十字架のさらに先にも行けそう。

足元に注意しながら歩を進めていくと……。うわー、アレッチ氷河が近い!! さえぎるものが何もない。ちょっぴり足が震えるが(笑)、登った人しか見られない光景に優越感。

風が強かったので、展望台のレストランのグーラッシュスッペが温かくておいしかった。
風が強かったので、展望台のレストランのグーラッシュスッペが温かくておいしかった。
岩山なので足もとに気をつけて。十字架を目指して登る。
岩山なので足もとに気をつけて。十字架を目指して登る。
世界遺産にも登録されているアレッチ氷河が目の前に。奥はユングフラウ方面。
世界遺産にも登録されているアレッチ氷河が目の前に。奥はユングフラウ方面。
奥に見えるのが展望台。登ってみる価値あり!
奥に見えるのが展望台。登ってみる価値あり!
illust_4.svg

動画はこちら

sw_43
【Information】日本からスイスへは―
成田~チューリヒ間を約14時間で結ぶ、スイス インターナショナル エアラインズの直行便が週5便運航している
[気候]春・秋は8~15度、夏は18~28度、冬は-2~7度。山岳地帯と麓の村では温度差があり、日中と朝晩の気温差も激しいので、レイヤード(重ね着)が基本。着脱しやすい服装を準備したい
[時差]日本の-8時間(夏は-7時間)
[言語]ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語(地域により異なる)。ホテルやお店では英語が通じる

取材・文・撮影=『旅の手帖』編集部 協力=スイス政府観光局、スイス インターナショナル エアラインズ、スイストラベルシステム