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レールがキラキラと光っている。朝、勝田駅から乗り込んだひたちなか海浜鉄道の湊線は、東の太陽へ向かいガタゴトと進んでいく。

「ふみきり、ヨーシ!」

運転士の指差喚呼(しさかんこ)が聞こえるなか、前の席に座っている男子高校生はうつらうつら。2駅目の金上(かねあげ)駅に着いたら、ここで初めての下車。『ホテルクリスタルパレス』で予約しておいた「みなとのたこめし」をテイクアウトし、駅弁みたいに鉄道旅を盛り上げる作戦だ。

スタッフの石川泰至(たいし)さんいわく「ひたちなかは、昭和30年代から煮ダコ生産量が日本一。やわらかく煮込んだ地ダコと、その出汁の染みたご飯がおいしいですよ」。

【金上駅】地ダコの出汁の染みたご飯がうまっ「みなとのたこめし」

日本一の煮ダコの生産地、ひたちなか市をPRしようと作られた「みなとのたこめし」1650円。『ホテルクリスタルパレス』(3日前までに要予約)などで販売。●金上駅から徒歩7分。
日本一の煮ダコの生産地、ひたちなか市をPRしようと作られた「みなとのたこめし」1650円。『ホテルクリスタルパレス』(3日前までに要予約)などで販売。●金上駅から徒歩7分。
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【中根駅】田園風景の中にぽつんと秘境駅の雰囲気

3月中〜下旬は桜が彩るホーム周辺。春の撮影スポットだ(写真=マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ)。
3月中〜下旬は桜が彩るホーム周辺。春の撮影スポットだ(写真=マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ)。
オリジナル駅名標!
オリジナル駅名標!

付近の風景や特産品などを盛り込んだ各駅名標にも注目。中根駅から2㎞ほど北東に、虎塚古墳と十五郎穴横穴(じゅうごろうあなよこあな)群といった史跡がある。

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湊線最大の駅・那珂湊(なかみなと)駅へ。構内にはキハ20系など懐かしの車両が。
湊線最大の駅・那珂湊(なかみなと)駅へ。構内にはキハ20系など懐かしの車両が。

車窓が中根駅付近の田園風景から市街地に変わる頃、漁港のある那珂湊駅に到着。

駅には同鉄道の本社があり、社長の吉田千秋さんが湊線延伸の歩みについて語ってくれた。

「社長に就任した2008年の翌年、阿字ヶ浦駅から国営ひたち海浜公園への無料シャトルバス運行を試験的に始めました。ネモフィラとコキアの見頃となる来園者数の多い時期限定だったのですが、予想を超える大反響。バスを最大4台まで稼働し、湊線は最大の3両編成にしても車内が混雑するほどでした」

「2026年4月11日~5月6日もネモフィラシャトルバスを運行予定です」とひたちなか海浜鉄道の吉田社長。
「2026年4月11日~5月6日もネモフィラシャトルバスを運行予定です」とひたちなか海浜鉄道の吉田社長。
4月中旬から5月上旬にかけ、ネモフィラの鮮やかな青に染まる、国営ひたち海浜公園のみはらしの丘(写真=国営ひたち海浜公園)。
4月中旬から5月上旬にかけ、ネモフィラの鮮やかな青に染まる、国営ひたち海浜公園のみはらしの丘(写真=国営ひたち海浜公園)。

【那珂湊駅】開業時の姿を留める木造駅舎

懐かしの周辺名所案内も。
懐かしの周辺名所案内も。
駅名標には猫駅長の姿が。
駅名標には猫駅長の姿が。
亡くなった猫駅長・おさむの盟友、ミニさむちゃんは那珂湊駅で日々を過ごす。
亡くなった猫駅長・おさむの盟友、ミニさむちゃんは那珂湊駅で日々を過ごす。
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約170年前、鉄製大砲を鋳造するために造られた那珂湊反射炉。昭和12年(1937)に模型で復元された。●那珂湊駅から徒歩15分。
約170年前、鉄製大砲を鋳造するために造られた那珂湊反射炉。昭和12年(1937)に模型で復元された。●那珂湊駅から徒歩15分。

湊線で海浜公園に向かう乗客の3割近くは、那珂湊駅でも降りて観光するという相乗効果も。そこで2013年に地元商工会が旗振りとなり、延伸のための第一回会議を開催。のちの延伸を実現する会の発足につながった。

「湊線は全線がひたちなか市内にあり、市民にとってまさに“おらが鉄道”。その団結力も延伸を促進させたと思います」

延伸工事の第一期は、同公園の南口ゲートが近い「新駅1」までの1.4㎞、第二期は西口ゲートが近い「新駅2」までの1.7㎞を延伸予定。新駅1の完成は数年後を見込んでいるそう。

「新駅1の南側は新たに住宅地が造られる予定で、その西側にはJX金属の工場が進出します。また、茨城県は7年前にひたちなか大洗リゾート構想を打ち出しました。ひたちなかに風が吹いている気がします」

若き女性駅員も活躍する。「お客様と駅員の距離感の近さも湊線の魅力です」。
若き女性駅員も活躍する。「お客様と駅員の距離感の近さも湊線の魅力です」。
この日乗った車両は、地元高校生による飾りつけにほっこり。
この日乗った車両は、地元高校生による飾りつけにほっこり。

那珂湊の木造駅舎を出たら、漁港の西側にある『那珂湊おさかな市場』へ。干物店の『カクダイ水産』をのぞくと、地魚のアンコウやカレイ、メヒカリと「こんなものまで!」が干物に。

場内の食事処で昼食をとろうと思ったが、行列の長さと次の列車時刻を考え、中心街の元町通りにある『喰い道楽 すみよし』へ向かう。もともとは大衆食堂だったが、和食で修業を重ねた2代目の高安泰二さんが厨房に入ってからは、ヒラメやタイにシラスまで海鮮料理が評判に!

那珂湊駅方面へ戻ったら、駅前の『Potato Labo』でお土産に干し芋を。こちらは自社農園をはじめ、糖度の高い茨城県産べにはるかにこだわっており、蜜のような甘さとなめらかな食感が魅力だ。

【那珂湊駅】売り手とお客の熱気に満ちる巨大市場『おさかな市場』

「脂ののったトロサバも評判です!」。
「脂ののったトロサバも評判です!」。
『魚一(うおいち)』で地魚を発見。「春先はカマスやムシガレイもおいしいよ!」。
『魚一(うおいち)』で地魚を発見。「春先はカマスやムシガレイもおいしいよ!」。

アンコウほか地魚の干物が自慢のカクダイ水産など、11店舗が軒を連ねる。●那珂湊駅から徒歩13分

【那珂湊駅】海の男たちの腹を満たしてきたご当地麺『喰い道楽 すみよし』

地魚数種を盛り込む海鮮丼2640円。
地魚数種を盛り込む海鮮丼2640円。
鉄板で炒める焼きそばはソースと、地元・黒澤醤油を使うしょうゆ(写真は中で880円)が選べる。
鉄板で炒める焼きそばはソースと、地元・黒澤醤油を使うしょうゆ(写真は中で880円)が選べる。

那珂湊や大洗から魚介を仕入れる海鮮料理に加え、65年前から続く焼きそばが名物。わたなべ製麺所の手延べせいろ蒸し麺をラードで炒め、さらにとんこつスープをかけて蒸し焼く焼きそばは、濃厚で食感もちもち!

☎029-262-3551
11:00~14:30LO(土・日・祝は~19:00)
火休(祝の場合は翌日)
茨城県ひたちなか市湊中央1-5-12
那珂湊駅から徒歩10分

【那珂湊駅】町の歴史と歩んできた和菓子『稲葉屋菓子店』

大砲の弾を彷彿させる飴玉・反射炉のてっぽう玉1袋324円。
大砲の弾を彷彿させる飴玉・反射炉のてっぽう玉1袋324円。
「店舗は築139年。むかしは店の前に魚市場があったよ」と4代目。
「店舗は築139年。むかしは店の前に魚市場があったよ」と4代目。

那珂湊には、店の建物や町の歴史を店の人が説明してくれる「まちかど博物館」が7施設ほどあり、同店はその一つ。4代目の稲野辺勉さんは和菓子職人で「白あんドーナツやくさ餅、いも餡の三さん浜ぴん焼各125円をぜひ」。

☎029-262-3701
8:30~17:30(時期により変動あり)
日休
茨城県ひたちなか市栄町1-7-21
那珂湊駅から徒歩15分

【那珂湊駅】干し芋はここまで進化した!『Potato Labo』

焼き芋ブリュレ788円(手前)や干し芋の黒糖シェイク650円など。
焼き芋ブリュレ788円(手前)や干し芋の黒糖シェイク650円など。
店内に並ぶ干し芋。べにはるかをまるごと干した丸干し400g1944円が人気。
店内に並ぶ干し芋。べにはるかをまるごと干した丸干し400g1944円が人気。

干し芋の魅力を幅広い世代に知ってもらおうと、干し芋カヌレ918円や干し芋生キャラメル810円など、さまざまなスイーツで提供。地元産べにはるかを半年から1年熟成させる干し芋は、ねっとりとして豊かな風味と甘み!

☎029-262-2282
10:00~18:00、無休
茨城県ひたちなか市釈迦町21-1
那珂湊駅から徒歩1分

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終点の先に金色(こんじき)の神様を見たり

殿山~平磯間にある沢メキ踏切は、海が最も近づく区間(写真=レイルマンフォトオフィス)。
殿山~平磯間にある沢メキ踏切は、海が最も近づく区間(写真=レイルマンフォトオフィス)。
リアルな姿に喉が鳴る! 湊線では、干し芋風つり革の車両が走ることも。乗れたらラッキー!
リアルな姿に喉が鳴る! 湊線では、干し芋風つり革の車両が走ることも。乗れたらラッキー!

再び下り列車に乗り、サツマイモ畑を抜けると、終点の阿字ヶ浦駅に到着。線路は北側の森で終わっているが、今後はさらに延びると思うと感慨深い。東へ少し歩くと、金色の鳥居連なる、ほしいも神社が現れた。

「ひたちなか市が日本屈指の干し芋生産地となった感謝の思い、また今後も若い人に干し芋作りを継承してほしいという思いを込め、創建しました」と宮司の宮本正詞(まさのり)さん。

神社名から“ほしいものが手に入る”というご利益がある……らしい。すると、隣でお守りを求めに来た参拝客が「こちらでお年賀にいただいたボールペンで馬券に記入したら、万馬券が当たった」という。

巫女さん、僕もお守り2つください!

【阿字ヶ浦駅】終着駅には鐵道神社も

線路内に鎮座するひたちなか開運鐵道神社。ご神体は湊線を走っていたキハ222、鳥居はレール製。
線路内に鎮座するひたちなか開運鐵道神社。ご神体は湊線を走っていたキハ222、鳥居はレール製。
駅名標には名物のアンコウ。
駅名標には名物のアンコウ。
『芋工房 周三(しゅうざ)』で、芋をまる干しする風景に遭遇。「2026年は3月末頃まで直売する予定です」。● 阿字ヶ浦駅から徒歩2分。
『芋工房 周三(しゅうざ)』で、芋をまる干しする風景に遭遇。「2026年は3月末頃まで直売する予定です」。● 阿字ヶ浦駅から徒歩2分。

【阿字ヶ浦駅】令和の新神社で祈願成就が続出? 「ほしいも神社」(堀出神社)

絵馬や鳥居の黄金色は、べにはるかの干し芋の色をイメージ。
絵馬や鳥居の黄金色は、べにはるかの干し芋の色をイメージ。
堀出神社の拝殿は再建だが、精巧な木鼻の彫刻は創建時のもの。
堀出神社の拝殿は再建だが、精巧な木鼻の彫刻は創建時のもの。

約350年前、水戸藩2代藩主・徳川光圀が塚を掘ったらご神体が現れたことから堀出神社の名に。令和元年には境内にほしいも神社を建立。参拝すれば「ほしいもの」が手に入るといわれ、祈願成就した人が奉納した、金の鳥居がずらり。

☎029-265-9533
境内自由
茨城県ひたちなか市阿字ケ浦町172-2
阿字ヶ浦駅から徒歩3分

「サツマイモの葉はハート形なんです」と宮司の宮本正詞さん。
「サツマイモの葉はハート形なんです」と宮司の宮本正詞さん。

【阿字ヶ浦駅】手が届きそうなほど海が目の前に! 『阿字ヶ浦温泉 のぞみ』

目前に海が広がる露天風呂。内風呂にはナノミストサウナも。
目前に海が広がる露天風呂。内風呂にはナノミストサウナも。
「食事処では春先までアンコウ鍋3080円も提供予定。1人前から注文できます!」と支配人の黒澤成光さん。
「食事処では春先までアンコウ鍋3080円も提供予定。1人前から注文できます!」と支配人の黒澤成光さん。

塩分をはじめ温泉成分が濃く、湯上がり後もポッカポカ。「家に帰ってもまだ温かいから寝つきがいい」という常連も! 水風呂を合わせてお風呂が男女各8種あり、約16~43度のさまざまな温度帯を楽しめる。

☎029-265-5541
10:00~21:00
木休(祝、GW、お盆期間は営業)
980円(土・日・祝は1250円、GWやお盆の特定日は1350円)
泉質/ナトリウム-塩化物泉
茨城県ひたちなか市阿字ケ浦町3290
阿字ヶ浦駅から徒歩10分

【阿字ヶ浦駅】もっちり食感で地元民を虜に『浜ベーカリィ あじぱん』

手前から干し芋スティック130円、名物の塩パン160円、奥はラクレット&黒胡椒パン860円など。
手前から干し芋スティック130円、名物の塩パン160円、奥はラクレット&黒胡椒パン860円など。
常連の多くが食パンを購入。
常連の多くが食パンを購入。

北海道出身の夫妻が開業。道産小麦のゆめちからと春よ恋で作るパンは、サクッとしつつもっちり食感。平飼い卵の常ひたち陸ハイエッグや阿字ヶ浦のアーモンドバター、イチゴといった地元食材を盛り込んだ菓子パン、総菜パンも!

☎029-229-1256
7:00~15:00
火・水休
茨城県ひたちなか市阿字ケ浦町391-2
阿字ヶ浦駅から徒歩6分

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取材・文・撮影=鈴木健太
『旅の手帖』2026年4月号より