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レールがキラキラと光っている。朝、勝田駅から乗り込んだひたちなか海浜鉄道の湊線は、東の太陽へ向かいガタゴトと進んでいく。
「ふみきり、ヨーシ!」
運転士の指差喚呼(しさかんこ)が聞こえるなか、前の席に座っている男子高校生はうつらうつら。2駅目の金上(かねあげ)駅に着いたら、ここで初めての下車。『ホテルクリスタルパレス』で予約しておいた「みなとのたこめし」をテイクアウトし、駅弁みたいに鉄道旅を盛り上げる作戦だ。
スタッフの石川泰至(たいし)さんいわく「ひたちなかは、昭和30年代から煮ダコ生産量が日本一。やわらかく煮込んだ地ダコと、その出汁の染みたご飯がおいしいですよ」。
【金上駅】地ダコの出汁の染みたご飯がうまっ「みなとのたこめし」
【中根駅】田園風景の中にぽつんと秘境駅の雰囲気
付近の風景や特産品などを盛り込んだ各駅名標にも注目。中根駅から2㎞ほど北東に、虎塚古墳と十五郎穴横穴(じゅうごろうあなよこあな)群といった史跡がある。
車窓が中根駅付近の田園風景から市街地に変わる頃、漁港のある那珂湊駅に到着。
駅には同鉄道の本社があり、社長の吉田千秋さんが湊線延伸の歩みについて語ってくれた。
「社長に就任した2008年の翌年、阿字ヶ浦駅から国営ひたち海浜公園への無料シャトルバス運行を試験的に始めました。ネモフィラとコキアの見頃となる来園者数の多い時期限定だったのですが、予想を超える大反響。バスを最大4台まで稼働し、湊線は最大の3両編成にしても車内が混雑するほどでした」
【那珂湊駅】開業時の姿を留める木造駅舎
湊線で海浜公園に向かう乗客の3割近くは、那珂湊駅でも降りて観光するという相乗効果も。そこで2013年に地元商工会が旗振りとなり、延伸のための第一回会議を開催。のちの延伸を実現する会の発足につながった。
「湊線は全線がひたちなか市内にあり、市民にとってまさに“おらが鉄道”。その団結力も延伸を促進させたと思います」
延伸工事の第一期は、同公園の南口ゲートが近い「新駅1」までの1.4㎞、第二期は西口ゲートが近い「新駅2」までの1.7㎞を延伸予定。新駅1の完成は数年後を見込んでいるそう。
「新駅1の南側は新たに住宅地が造られる予定で、その西側にはJX金属の工場が進出します。また、茨城県は7年前にひたちなか大洗リゾート構想を打ち出しました。ひたちなかに風が吹いている気がします」
那珂湊の木造駅舎を出たら、漁港の西側にある『那珂湊おさかな市場』へ。干物店の『カクダイ水産』をのぞくと、地魚のアンコウやカレイ、メヒカリと「こんなものまで!」が干物に。
場内の食事処で昼食をとろうと思ったが、行列の長さと次の列車時刻を考え、中心街の元町通りにある『喰い道楽 すみよし』へ向かう。もともとは大衆食堂だったが、和食で修業を重ねた2代目の高安泰二さんが厨房に入ってからは、ヒラメやタイにシラスまで海鮮料理が評判に!
那珂湊駅方面へ戻ったら、駅前の『Potato Labo』でお土産に干し芋を。こちらは自社農園をはじめ、糖度の高い茨城県産べにはるかにこだわっており、蜜のような甘さとなめらかな食感が魅力だ。
【那珂湊駅】売り手とお客の熱気に満ちる巨大市場『おさかな市場』
アンコウほか地魚の干物が自慢のカクダイ水産など、11店舗が軒を連ねる。●那珂湊駅から徒歩13分
【那珂湊駅】海の男たちの腹を満たしてきたご当地麺『喰い道楽 すみよし』
那珂湊や大洗から魚介を仕入れる海鮮料理に加え、65年前から続く焼きそばが名物。わたなべ製麺所の手延べせいろ蒸し麺をラードで炒め、さらにとんこつスープをかけて蒸し焼く焼きそばは、濃厚で食感もちもち!
☎029-262-3551
11:00~14:30LO(土・日・祝は~19:00)
火休(祝の場合は翌日)
茨城県ひたちなか市湊中央1-5-12
那珂湊駅から徒歩10分
【那珂湊駅】町の歴史と歩んできた和菓子『稲葉屋菓子店』
那珂湊には、店の建物や町の歴史を店の人が説明してくれる「まちかど博物館」が7施設ほどあり、同店はその一つ。4代目の稲野辺勉さんは和菓子職人で「白あんドーナツやくさ餅、いも餡の三さん浜ぴん焼各125円をぜひ」。
☎029-262-3701
8:30~17:30(時期により変動あり)
日休
茨城県ひたちなか市栄町1-7-21
那珂湊駅から徒歩15分
【那珂湊駅】干し芋はここまで進化した!『Potato Labo』
干し芋の魅力を幅広い世代に知ってもらおうと、干し芋カヌレ918円や干し芋生キャラメル810円など、さまざまなスイーツで提供。地元産べにはるかを半年から1年熟成させる干し芋は、ねっとりとして豊かな風味と甘み!
☎029-262-2282
10:00~18:00、無休
茨城県ひたちなか市釈迦町21-1
那珂湊駅から徒歩1分
終点の先に金色(こんじき)の神様を見たり
再び下り列車に乗り、サツマイモ畑を抜けると、終点の阿字ヶ浦駅に到着。線路は北側の森で終わっているが、今後はさらに延びると思うと感慨深い。東へ少し歩くと、金色の鳥居連なる、ほしいも神社が現れた。
「ひたちなか市が日本屈指の干し芋生産地となった感謝の思い、また今後も若い人に干し芋作りを継承してほしいという思いを込め、創建しました」と宮司の宮本正詞(まさのり)さん。
神社名から“ほしいものが手に入る”というご利益がある……らしい。すると、隣でお守りを求めに来た参拝客が「こちらでお年賀にいただいたボールペンで馬券に記入したら、万馬券が当たった」という。
巫女さん、僕もお守り2つください!
【阿字ヶ浦駅】終着駅には鐵道神社も
【阿字ヶ浦駅】令和の新神社で祈願成就が続出? 「ほしいも神社」(堀出神社)
約350年前、水戸藩2代藩主・徳川光圀が塚を掘ったらご神体が現れたことから堀出神社の名に。令和元年には境内にほしいも神社を建立。参拝すれば「ほしいもの」が手に入るといわれ、祈願成就した人が奉納した、金の鳥居がずらり。
☎029-265-9533
境内自由
茨城県ひたちなか市阿字ケ浦町172-2
阿字ヶ浦駅から徒歩3分
【阿字ヶ浦駅】手が届きそうなほど海が目の前に! 『阿字ヶ浦温泉 のぞみ』
塩分をはじめ温泉成分が濃く、湯上がり後もポッカポカ。「家に帰ってもまだ温かいから寝つきがいい」という常連も! 水風呂を合わせてお風呂が男女各8種あり、約16~43度のさまざまな温度帯を楽しめる。
☎029-265-5541
10:00~21:00
木休(祝、GW、お盆期間は営業)
980円(土・日・祝は1250円、GWやお盆の特定日は1350円)
泉質/ナトリウム-塩化物泉
茨城県ひたちなか市阿字ケ浦町3290
阿字ヶ浦駅から徒歩10分
【阿字ヶ浦駅】もっちり食感で地元民を虜に『浜ベーカリィ あじぱん』
北海道出身の夫妻が開業。道産小麦のゆめちからと春よ恋で作るパンは、サクッとしつつもっちり食感。平飼い卵の常ひたち陸ハイエッグや阿字ヶ浦のアーモンドバター、イチゴといった地元食材を盛り込んだ菓子パン、総菜パンも!
☎029-229-1256
7:00~15:00
火・水休
茨城県ひたちなか市阿字ケ浦町391-2
阿字ヶ浦駅から徒歩6分
取材・文・撮影=鈴木健太
『旅の手帖』2026年4月号より







