ぬる湯だからこそ得られる悦楽
青木村の山間に佇む『田沢温泉 富士屋』は“ぬる湯の贅沢”を教えてくれる場所だ。
露天風呂の温度は38~39度、内湯は少し熱め——といっても40度前後。熱湯好きにはややもの足りない数字にも見えるけれど、長湯の叶うぬる湯だからこそ得られる悦楽がある。
「30分、40分と湯に浸かれば、玉のような汗が吹き出ますよ」館主の武井功さん。
湯に含まれる成分が“羽衣”と化して全身を包み込むため、低めの湯温も気にならない。むしろ、じっくり湯に浸かれることで深部体温が上がり、類まれなぽかぽか感を実感できる。
さらには、体温が徐々に上昇することで副交感神経が優位に働き、リラックス効果も期待できるとか。
「『血流がよくなり末端冷え性が回復しました』という声もよくいただきますね。深部体温が上がれば、免疫力も上がる。古くから子宝の湯、不老長寿の湯と呼ばれてきたのは、体の芯から温まれるお湯だからなのでしょう」
手間を惜しまず、ほぼすべてを手作りで仕上げる料理もまた、湯にも劣らぬ『富士屋』の誇り。
地元食材に寄り添い、その日のゲストのためだけに考え抜かれたひと皿は、温泉と同じく心身を癒やす力に満ちている。
住所:長野県青木村田沢2689/アクセス:北陸新幹線上田駅からバス35分の青木バスターミナル下車。バスターミナルから送迎あり(要予約)
取材・文=松井さおり 撮影=平松マキ
『旅の手帖』2026年2月号より








