しばらく浸かっていると、体の芯から温まる
湯小屋は本館から100段の階段を下り、阿武隈川(あぶくまがわ)の源流に架かる橋を渡った谷底にある。
「混浴」の札が掛かる大岩風呂の扉を開けると、もうもうと立ち込める湯気の中にランプの明かりが点る。ほの暗さに目が慣れると、まさに大岩をくりぬいたような巨大な湯船が現れた。
足元の花崗岩の裂け目から自噴する31~34度のぬるめの源泉と、奥にある鳥居の湯口から注ぎ込む44~45度の源泉が、湯船の中で混ざり合っている。
「源泉がどちらも空気にふれていないので、大岩風呂は特に湯がやわらかく感じます」と主人の草野正人さん。
深さは最大1.2mもあり、独特の浮遊感を味わいながら立って浸かる。最初はぬるいと思うが、しばらく浸かっていると、体の芯から温まり、それが湯上がりも持続する。水圧の効果と相まって、体の力がふっと抜け、軽くなったように感じる。
この大岩風呂は混浴だが、夜と朝に女性専用時間が設けられるので、ご安心を。湯船の中央には、なでると子宝に恵まれるとされてきた「子宝石」もある。
大岩風呂と隣の女性専用の「櫻の湯」が単純温泉、露天風呂を併設する「恵比寿の湯」には硫酸塩泉が注がれており、泉質の違いを確かめながらの湯めぐりもいい。
深山に囲まれた一軒宿の湯浴みは、せせらぎと湯の音しか耳に届かない。そんな環境も心身を癒やしてくれるはずだ。
取材・文=野水綾乃 撮影=平石順一
『旅の手帖』2026年2月号より








