ワインで感じてみよう、能登の風土がくれた恵みを

ワイナリーの周辺に広がっているブドウ畑(写真=能登ワイン)。
ワイナリーの周辺に広がっているブドウ畑(写真=能登ワイン)。

ワイナリーの周りには、ヨーロッパの田舎のようなブドウ畑が広がり、ここが能登であることを忘れてしまいそうになる。

能登の気候風土が育んだブドウから造られる『能登ワイン』のワインは、香り豊かで日本人に親しみやすい味わい。土壌改良には穴水特産のカキの殻を使用し、殻から出る海のミネラル分がブドウを元気にしているのも特徴だ。

「19年前からワインを始めましたが最初の頃はまったく売れず、能登でワインを造っていると言っても信じてもらえませんでした」と、『能登ワイン』で営業を担当する丸山敦史さん。何年か経ってワインコンクールで入賞できるようになり、少しずつその名前が知られるようになった。

「ここに来て、能登のテロワールを感じてもらうのが一番」と、ワイナリー見学も試飲も無料で提供している。試飲は常時8種類前後を用意し、制限なく試すことができるという大盤振る舞いだ。

2023年樽熟成「心の雫」720ml3300円をはじめ、能登産ブドウで造られたワイン。赤、白、ロゼ、スパークリング各種がそろう。
2023年樽熟成「心の雫」720ml3300円をはじめ、能登産ブドウで造られたワイン。赤、白、ロゼ、スパークリング各種がそろう。
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2024年の元日の地震では、建物には大きな被害はなかったものの、館内はめちゃくちゃとなり、タンクの一つからは瓶に換算すると1万5000本分ものワインが流失してしまった。幸い、社員や家族に人的な被害はなかったものの、自宅が全壊した人もいて、多くが避難所から通い、片づけを始めた。

「オンラインショップでの注文がすごい数になっていて、落ち込んだり、悩んだりしている場合ではないと、とにかくこれにこたえねばという思いで走り始めました」

2月下旬に断水していた水道が仮復旧して製造を再開し、4月30日には客の受け入れも再開できた。

「能登は復興の道半ばですけど、その過程も見ていただきたいです。私たちは観光バスが走っているのを見ると、能登に思いを寄せてくださっている人がいることにうれしくなり、気持ちも前に向きます」

「まずはここに来てください」という丸山さん。 熟成樽には地震で落下して壊れた樽から飛び散ったワインのシミが残る。
「まずはここに来てください」という丸山さん。 熟成樽には地震で落下して壊れた樽から飛び散ったワインのシミが残る。

『能登ワイン』には、収穫体験とワイン5本が届く「ぶどうの木オーナー」制度(一口1万円)がある。秋には、自分のブドウを収穫しに能登へ出かけてみる、というのはいかがだろうか。

『能登ワイン』
☎0768-58-1577
9:00〜17:00(12〜2月は〜16:00)、ワイナリー見学は11:00〜・14:00〜の一日2回(要予約)、無休。ワイナリー見学・試飲ともに無料
石川県穴水町旭ケ丘り5-1
https://notowine.com/

取材・文・撮影=若井 憲