全国のJR線の快速・普通列車が乗り降り自由となる「青春18きっぷ(以下18きっぷ)」。知っておきたい使い方のキホンのキからお得な使い方、さらに旅の可能性を広げるトクトクきっぷとの組み合わせまでを徹底ガイド。18きっぷを使って、この夏をもっともっと楽しもう!

「博多発日帰り、城跡めぐり&ひこぼしライン旅」のルートはこちら!

【日帰り】
博多駅→鹿児島本線・久大(きゅうだい)本線・日田彦山線BRT「ひこぼしライン」・日田彦山線・鹿児島本線→博多駅

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博多駅→日田駅 歴史ある町並みと城跡を散策

江戸時代の町割がほぼ現存し、往時の面影が残る日田豆田の町並み。
江戸時代の町割がほぼ現存し、往時の面影が残る日田豆田の町並み。
趣ある商家や土蔵も立ち並んでおり、その意匠にも注目したい。
趣ある商家や土蔵も立ち並んでおり、その意匠にも注目したい。

久大本線沿線には、城跡や歴史ある町並みが点在している。青春18きっぷでのんびり旅するのに、ちょうどいい距離感だ。今回は、2023年8月に開業した日田彦山線BRT「ひこぼしライン」にも乗ってみたい。

久留米市にある久留米城跡を見学したあと、かつて江戸幕府の直轄地・天領として栄え、九州の政治や経済の中心地として発展した日田市へ。

天領時代の風情を色濃く残すのが豆田(まめだ)町と隈(くま)の町並みだ。文禄3年(1594)、三隈川の河畔にある日隈山に日隈城が築かれた際、隈の城下町が形成された。

一方、慶長6年(1601)、大名の小川光氏が月隈山に永山城を築城したときに、城下町として築かれたのが豆田町である。ほぼ同時期に、わずか約2kmの距離に2つの平山城が完成している。

さっそく、江戸時代の町割りが残る豆田町を散策。白壁の商家や土蔵が軒を連ね、老舗の酒蔵や和菓子店など、立ち寄り処が多い。

【久留米駅】「久留米城跡」久留米藩21万石の藩主・有馬氏の栄華を伝える

筑後川を天然の堀とする高台に築かれた平山城。見事な石垣が現存する。
筑後川を天然の堀とする高台に築かれた平山城。見事な石垣が現存する。
藩祖・有馬豊氏(とようじ)を祀る篠山神社が鎮座。
藩祖・有馬豊氏(とようじ)を祀る篠山神社が鎮座。

江戸時代に約250年間、久留米藩を治めた大名・有馬氏の居城跡。現在は本丸跡に石垣や井戸、内堀などが残る。城内には明治時代創建の篠山(ささやま)神社や、有馬家ゆかりの歴史史料、美術工芸品などを展示する『有馬記念館』がある。

☎0942-33-4422(久留米市観光案内所)
見学自由
福岡県久留米市篠山町444
JR鹿児島本線久留米駅から徒歩15分

【日田駅】「亀山(きざん)公園・日隈(ひのくま)城跡」水郷・日田を代表する水辺の公園

巨木に覆われた丘陵・日隈山が三隈川を分流している。
巨木に覆われた丘陵・日隈山が三隈川を分流している。
日隈城大手門跡に石垣が現存。石段を上ると日隈神社がある。
日隈城大手門跡に石垣が現存。石段を上ると日隈神社がある。

夏の風物詩・鵜飼(うかい)で知られる三隈川沿いに広がる水辺の景勝地。亀山公園として整備され、市民の憩いの場になっている。日田三丘陵の1つ・日隈山にはかつて平山城の日隈城が築かれた。現在は大手門跡にある枡形虎口の石垣が往時を偲ばせる。

☎0973-22-8217(日田市都市整備課)
見学自由
大分県日田市中ノ島町
JR久大本線日田駅から徒歩15分

【日田駅】「月隈公園・永山城跡」山腹崖面には古墳時代後期の横穴墓も

永山城跡の石垣と堀の一部が残る。夏はハスの花が見頃に。
永山城跡の石垣と堀の一部が残る。夏はハスの花が見頃に。
月隈山の山頂付近にある永山城跡の本丸跡から日田市街を見渡せる。
月隈山の山頂付近にある永山城跡の本丸跡から日田市街を見渡せる。

永山城跡は、阿蘇溶結凝灰岩でできた丘陵・月隈山に築かれた平山城跡。山頂付近の本丸跡に建物礎石や曲輪(くるわ)、大きな川原石をそのまま用いた石垣などが残る。城跡一帯は月隈公園として遊歩道や東屋などが整備されている。

☎0973-22-8217(日田市都市整備課)
見学自由
大分県日田市丸山2-2
JR久大本線日田駅から車5分

 

【日田駅】『中華さと』複雑な旨味のスープがクセになる一杯

プノンペンラーメン900円。太い縮れ麺にエスニック風のスープがほどよく絡む。
プノンペンラーメン900円。太い縮れ麺にエスニック風のスープがほどよく絡む。

創業30余年。看板メニューのプノンペンラーメンは、豚骨と鶏ガラがベースの醬油味のスープに、トマトやセロリ、チンゲンサイなど具材がたっぷりの一杯だ。トマトの酸味が効いた天津丼風のトマト丼900円も人気。

☎0973-22-1962
11:00~15:00・17:00~21:00(スープがなくなり次第終了)、月休
大分県日田市元町13-20
JR久大本線日田駅から徒歩3分

 

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日田駅→博多駅 念願の「ひこぼしライン」に乗車!

5時間ほど日田に滞在後、楽しみにしていた日田彦山線BRT「ひこぼしライン」に乗車し、北九州方面へ向かうことに。

青春18きっぷでも乗ることができるBRTとは、バス高速輸送システムのこと。小倉~夜明(よあけ)・日田間の約68.7kmを結ぶ日田彦山線は2017年の九州北部豪雨により不通になっていたが、2023年8月に添田~夜明・日田間の約40㎞がひこぼしラインとして復活。そのうち彦山~宝珠山(ほうしゅやま)間の約14㎞は、線路跡がBRT専用道路として整備され、運行している。

日田駅を出発したバスは、しばらく一般道を走行。宝珠山駅からBRT専用道路へ。列車が走っていたルートをバスで走行するのはなんとも不思議な気分。列車とは異なる目線の高さや速度、揺れも新鮮だ。

平成の名水百選の一つ・岩屋湧水が湧き出す筑前岩屋駅を過ぎると、「間もなくひこぼしライン沿線で最も眺めがいい眼鏡(めがね)橋の上を通過します」とアナウンスが。

鉄道時代も撮影スポットとして人気だった宝珠山橋梁だ。橋上はゆっくり走行するので、青々とした棚田が広がる里山の風景を車窓から存分に楽しんだ。全長4397mの釈迦岳トンネルを通過し、名残惜しいがBRT専用道路は彦山駅で終了した。

私以外にもBRTが目的という旅行客がちらほら。開業から間もなく1年。まだまだ注目度は高いようだ。

日田~添田間を約1時間半で結ぶ「ひこぼしライン」に乗ろう!

筑前岩屋~深倉間の宝珠山橋梁(眼鏡橋)を通過するBRT専用バス。昭和13年(1938)に架設された5連アーチ橋で、国の近代土木遺産に認定されている(写真=JR九州)。
筑前岩屋~深倉間の宝珠山橋梁(眼鏡橋)を通過するBRT専用バス。昭和13年(1938)に架設された5連アーチ橋で、国の近代土木遺産に認定されている(写真=JR九州)。
趣ある宝珠山駅の旧駅舎は、大分県と福岡県の県境に位置。かつてホームがあった場所にBRT駅が設置されている。
趣ある宝珠山駅の旧駅舎は、大分県と福岡県の県境に位置。かつてホームがあった場所にBRT駅が設置されている。
車窓にはのどかな里山の風景が広がる。
車窓にはのどかな里山の風景が広がる。
鮮やかな深緑が続く車窓に、乗客の会話も弾む。
鮮やかな深緑が続く車窓に、乗客の会話も弾む。

きらめく夜の門司(もじ)港へ!

ひこぼしラインを降りたら、帰りに美しい夜景で知られる門司港に立ち寄ろう。

『門司港茶寮』コク深いカレーがチーズとマッチ

昭和30年代に誕生した門司港名物の焼きカレー1100円(サラダ付き)が人気。懐かしい味で、中央の卵は生卵と固ゆで玉子から選べる。

☎︎093-332-7122
10:00~21:00、不定休
福岡県北九州市門司区港町7-8
JR鹿児島本線門司港駅から徒歩1分

「門司港駅」門司港レトロの象徴

明治24年(1891)に開業。2019年には約6年におよぶ復原工事を終え、大正3年(1914)完成当時の姿に蘇った。ネオルネサンス様式のデザインを基調とした木造駅舎は、現役の駅舎では東京駅とともに全国で2つのみ、国の重要文化財に指定されている。

『門司港レトロ展望室』これぞ日本新三大夜景都市!

103mの高さから関門海峡や門司港レトロの町並み、対岸の下関などを一望できる。日本夜景遺産にも認定されている。

☎093-32-4151
10:00~21:30受付、不定休。300円
福岡県北九州市門司区東港町1-32
JR鹿児島本線門司港駅から徒歩8分

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取材・文=佐藤 史 撮影=玉村恵理子 写真(門司港駅、門司港レトロ展望室)=福岡県観光連盟
『旅の手帖』2024年7月号より

夏の九州で南国気分を満喫したい! 九州で一番長い路線・日豊(にっぽう)本線を完乗、目指すは極上の癒やしが待つ指宿(いぶすき)と、JRの日本最南端駅・西大山。道中にはイルカや完熟マンゴーなど、南国ならではの魅惑の出会いが待ち受けていた。
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鉄道だとお酒が飲めるので、のんべえにはうってつけ。栃木に、なにやらおもしろい酒蔵があるという。日帰りで、地酒をたんまり楽しむ“呑み鉄”の旅に出発~!
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