山と海、どちらも欲張りに
最初に向かったのは“山陰の小京都”と名高い津和野町。掘割に鯉が泳ぐ殿町通りや、商店が軒を連ねる本町通りをゆるり散策。
太皷谷稲成(たいこだにいなり)神社へ続く263段の石段には、朱塗りの鳥居が約1000本立ち並ぶ。まるで日常を忘れさせる異世界の入口のようだ。
『ゆとりろ津和野』の露天風呂からは津和野城跡が見えた。湯に身を沈めると、冷えた体が芯から温まっていく。夕食は地元酒蔵の酒粕を使った鍋。美容にもいいと聞き、なおさらうれしい。
山間の津和野から車で45分。潮の香りが混じり始めると、益田が近い。
旅の拠点にした『MASCOS HOTEL(マスコス ホテル)』で、まずは温泉へ。湯はさらりと肌になじんで心地いい。ここでは月に一度、石見(いわみ)神楽が開かれる。伝統の舞を夕食とともに楽しめるとは。
次はその日に合わせて訪れたい。翌日は幸運にも天気に恵まれた。そこで向かったのが、衣毘須(えびす)神社。波打ち際の砂地を辿っていくと、海にぽつりと浮かぶ小さな社が姿を現す。そのひとときのご縁が愛おしい。
津和野と益田。山と海。どちらも味わえるなんて至福じゃないか。
津和野
『ゆとりろ津和野』初めてでも懐かしい城下町の湯宿
津和野唯一の温泉宿。「津和野百景図」をもとに自分だけの旅程を作れる「TSUWANO CONCIERGE(コンシェルジュ)」や地元茶屋「秀翠園」とコラボしたドリンクコーナー「MIZUYA」、津和野を含む山陰の酒を味わえる「利き酒STAND」など、津和野を存分に楽しめる工夫が満載。
☎0570-031-085
1泊2食1万2650円~
日帰り入浴は15:00~22:00、無休。1000円
泉質/ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
島根県津和野町後田ロ82-3
JR山口線津和野駅から徒歩8分
津和野温泉
肌の不要な角質をやさしく落とす美肌の湯として知られる一方、塩分が湯冷めを防ぎ、しっとりとした保温感を残すのが特徴。肌あたりはやわらかく、湯上がりはつるりとなめらか。
「太皷谷稲成神社」朱塗りの鳥居が並ぶ先にある津和野の守護神
日本五大稲荷の一社。安永2年(1773)、津和野藩7代藩主・亀井矩貞(のりさだ)が藩の安泰と人々の平穏を願って創建。京都・伏見稲荷大社の祭神を勧請して祀ったことに始まる。「稲成」と記すのは願いが成るに通じるため。
☎0856-72-0219
境内自由
島根県津和野町後田409
JR山口線津和野駅から車5分
益田
『MASCOS HOTEL』地元文化を感じるクラフトホテル
益田市を中心とした地域カルチャーやライフスタイルを発信する拠点として、2019年に誕生。空間デザインから器、ファブリックまで石見地方の職人や窯元、縫製メーカーと共同制作。各フロアにはブックコーナーもある。
☎0856-25-7331
1泊朝食1万2400円~
日帰り入浴は11:00~22:00、無休。1210円(17:00~22:00は1650円)
泉質/炭酸水素ナトリウム泉
島根県益田市駅前町30-20
JR山陰本線益田駅から徒歩5分
益田温泉
湯に入ると皮脂を乳化させやすくする性質をもち、肌をすべすべに整え、血行を促す作用があるとか。入浴後にさっぱりとした快い湯上がり感があり、体が軽やかに。長湯もしやすく、心身にやさしい。
「宮ヶ島 衣毘須神社」自然の美しさと神秘にふれる絶景空間
小浜海岸の岩礁・宮ヶ島に鎮座し、主祭神は事代主之命(ことしろぬしのみこと)。島根半島の東端にある美保神社から分霊され、漁業の守り神として信仰される。満潮や荒天で参道が消え、島へ渡れなくなることがあるため“山陰のモンサンミッシェル”とも呼ばれる。
☎0856-22-7120(益田市観光協会)
境内自由
島根県益田市小浜町630
JR山陰本線戸田小浜駅から徒歩15分
取材・文=大須賀あい 撮影=中野一行 協力=島根県
『旅の手帖』2026年2月号より







