臼杵と竹田、どこにある?
【臼杵】ユネスコ食文化創造都市で、今昔の食を知り“口福(こうふく)”を感じる
戦国武将・大友宗麟(そうりん)が築城した臼杵城跡を中心に、歴史的な町並みが残る臼杵市。近年はユネスコ創造都市ネットワークの食文化分野に加盟し、臼杵の食を世界に発信している。
八町大路で「自慢の味噌ソフトクリームはいかが?」と誘われ、『鑰屋(かぎや) カニ醤油』に入った。麦味噌を使ったトッピングがミルク味によく合う。店内には、味噌ジャムの「ジョニーパンディップ」や卵スープの素「坂東タマスプ郎」など、独特なネーミングの味噌と醤油が約50種も並ぶ。
「笑って帰ってほしくておもしろい名前にしたんです。でも私が本当に使ってほしいのは米こうじ。臼杵の発酵文化を体感してもらえたら」と可兒(かに)明子さんがほがらかに話す。
ランチは臼杵石仏近くの『USAMI食堂』で季節のごはんを。夫の宇佐美裕之さんが作った器をキャンバスに見立て、宇佐美友香さんが絵を描くように色とりどりの野菜を配置する。
見た目の美しさに圧倒されながらいただくと、野菜の香りと旨味が口に広がる。決して薄味ではない。このいい塩梅(あんばい)に感動していると、「野菜に頼った調理をしているんです。『ほんまもん農産物』じゃないと出せません」と教えてくれた。
宿は、名物の臼杵ふぐが食べられる『御宿料亭 春光園』に決めた。「ほかの地域は刺身にする前にひと晩寝かせますが、臼杵ふぐはその日のうちにさばきます。身が硬いので、縁だけ厚めに引いているんですよ」
兒玉泰賞(こだまやすたか)さんが言うように、その厚みゆえ弾力があり味が濃い。フグにネギを巻き、相性抜群の地酒をきゅっと一献。
臼杵の食は臼杵ふぐのように厚みがあり、知れば知るほどに興味が湧いてきた。
九州最古の味噌・醤油蔵へ『鑰屋 カニ醤油』
慶長5年(1600)創業。国の登録有形文化財に登録された店舗で、麹づくりなどの作業風景を見学しながら醤油や味噌、麹を購入できる。九州の醤油と味噌は甘めだが、ここの定番商品は甘さ控えめ。
鑰屋(かぎや) カニ醤油
☎0972-63-1177
9:00~17:00、火休
大分県臼杵市臼杵218
JR日豊本線臼杵駅から徒歩15分
野菜のもつパワーをあらゆる技法で引き出す『USAMI食堂』
臼杵石仏のそばにある食事処。その時に一番おいしい「ほんまもん農産物」を使った季節のごはんのほか、臼杵名物のたち重1650円もおすすめだ。併設の土産物店では、宇佐美裕之さんの作る臼杵焼の器も購入できる。
USAMI食堂
☎0972-65-3333
11:00~15:00、月・火休
大分県臼杵市深田833-5
JR日豊本線臼杵駅からバス20分の臼杵石仏下車、徒歩1分
400年の歴史感じる庭を望み、名物のふぐ料理を食す『御宿料亭 春光園』
臼杵藩主だった稲葉藩家老・稲川家の武家屋敷跡に泊まれる料亭旅館。小堀遠州の作庭という庭を眺めながらフグを食べることができる。食事だけの利用も可能で、天然フグは3万3000円、養殖フグは2万2000円(要予約)。
御宿料亭 春光園
☎0972-63-3128
1泊2食3万9100円~。
食事のみは11:00~14:00LO・17:00~22:00LO、不定休
大分県臼杵市臼杵24
JR日豊本線臼杵駅から車5分
イベントもあるよ!
うすき竹宵[2025年11月1・2日]
30年ほど前から続く臼杵市の秋の風物詩。約2万本の竹ぼんぼりに明かりが灯され、城下町一帯が幻想的な光に包まれる。
usuki farmer’s market ひゃくすた
2年以上有機農業で作られた畑で育った「ほんまもん農産物」などの野菜と、その野菜で作る加工品を販売するマーケット。スーパーでは見かけない、珍しい野菜に出会えるかも?
●1月を除く、第1日曜に臼杵石仏公園で開催。8:00~11:00(10~4月。時期により変動あり)
【竹田】しゅわしゅわの炭酸泉は調理にも入浴にも
豊後(ぶんご)竹田駅を出ると行列ができているお店を発見。名前は『かどぱん』。店内には甘い香りが立ち込めている。ブルーベリークリームチーズパンを手に取ると、「ブルーベリーと卵は竹田産です。すべてのパンに湧水を使っているんですよ」と臼田朗(あきら)さん。約30年前に移住し、12年前にこの店をオープンさせたという。
城下町をぶらりと歩き、予約していた『Kana’s kitchen at RecaD(カナズ キッチン アット リカド)』へ。
出迎えてくれたのは、竹田の人と野菜に惚れて移住してきた松岡可奈さんだ。「主役は竹田の野菜。農家のみなさんが作りたい料理に合う野菜を提案してくださり、ひと皿が完成します」。長湯温泉にあるラムネ温泉の炭酸泉で茹でたパスタは、アルデンテなのに不思議ともっちりしている。
早めに行って温泉に浸かろうと今宵の宿、『宿房 翡翠之庄(かわせみのしょう)』へ。夕食は“渓流の女王”と称されるエノハ(ヤマメ)を味わうコースだ。刺身に焼き物、骨の唐揚げ……。川魚特有のにおいもなく、ほんのりと甘みを感じる。
食後は星空を望む温泉に浸かりながら、「竹田のうまいものには水の力あり」と一日を振り返った。
厳選食材を使う、体にやさしいパン屋さん『かどぱん』
トマトやブルーベリー、ジャガイモといった地元の旬の食材に、九州産の小麦と近隣の湧水を使って作る。イートインスペースがあるので、焼きたてをすぐに食べられるのもうれしい。人気のバゲットは午前中に売り切れることも。
かどぱん
☎0974-62-3714
11:00~17:30、月~水休
大分県竹田市竹田町560-1
JR豊肥本線豊後竹田駅から徒歩2分
竹田の魅力が詰まったひと皿に文化を添える『Kana’s kitchen at RecaD』
城下町にあるイタリア料理店。農家から直接仕入れた野菜を主役にした前菜とパスタのフルコースが好評。硬水である長湯温泉の炭酸泉や地元の湧水などを料理に合わせて利用する。早めの予約がベスト。
Kana’s kitchen at RecaD(カナズ キッチン アット リカド)
☎0974-62-2636
11:30~15:00(金・土は18:30~22:00も営業)、月・火休
大分県竹田市竹田町498
JR豊肥本線豊後竹田駅から徒歩8分
“日本一の炭酸泉”と“渓流の女王”を堪能『宿房 翡翠之庄』
長湯温泉街から車で5分ほどの場所にある隠れ家的な宿。小高い丘に立ち、緑豊かな敷地には図書室や星見やぐらなどが点在。炭酸ガス濃度が高く“日本一の炭酸泉” といわれる源泉かけ流しの風呂は、体の芯まで温めてくれるだけでなく肌もツヤツヤに。
宿房 翡翠之庄(かわせみのしょう)
☎0974-75-2300
1泊2食2万1400円~、13室
泉質:ナトリウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉
大分県竹田市直入町長湯7443-1
JR豊肥本線豊後竹田駅から車20分
イベントもあるよ!
たけた竹灯籠「竹楽(ちくらく)」 [2025年11月21~23日]
約2万本の竹灯籠が武家屋敷通り、廣瀬神社など、風情豊かな城下町に並ぶ。地元グルメが楽しめる屋台のほか、ワークショップや音楽イベントなども。
取材・文=福田恭子 撮影(竹あかりイベント、ひゃくすたを除く)=樋渡新一
協力=大分県東京事務所
『旅の手帖』2025年11月号より





