“ビワイチ”全体マップ
【行程】
1日目:大津港→JR高月駅/高月泊
2日目:JR高月駅→大津港
※レンタサイクルショップの営業時間は9〜17時、時間内の返却マスト
※時速約15kmペースで、約20kmごとに休憩
クロスバイクを借り、反時計回りにスタート
スタートは琵琶湖の南、滋賀県の中心都市の大津市。
JR大津駅から歩いて20分ほどの大津港にあるレンタサイクルショップでクロスバイクを借りる。事前予約可能で料金は連泊プランで8800円。ヘルメット・鍵・スピードメーター付きで、ビワイチチャレンジャー向けに簡単な解説もしてくれるので、初心者でも安心だ。近年は幅広い世代の人が挑戦しているらしい。
車種は本格的なロードバイクから、電動モーター付きのE-Bikeなどさまざまで、今回は初心者にもおすすめというクロスバイクを借りた。
ビワイチは原則、反時計周りに走ると決まっている。国の「ナショナルサイクルルート」に指定されていて、道には常にブルーのラインがあり、道中にも看板があるので迷う心配はない。どこからでも出入りは可能で、大津のほかにも米原駅などでも自転車を借りられる。
朝9時20分、いざ出発!
最初のポイントは湖の南端、大津の「瀬戸の唐橋」。日本三大古橋の一つでかつての交通の要衝だ。「急がば回れ」という言葉は、渡し船より、遠回りしてこの瀬戸の唐橋を渡るほうが確実という旅の教訓からきているのだそう。
平らで走りやすい東側を北上
琵琶湖の東サイドは湖岸沿いの平坦で走りやすい道が続く。守山の第2なぎさ公園にあるBIWAKOモニュメントを横目に、『道の駅 草津 グリーンプラザからすま』で買ったお弁当を昼食に頬張りつつ、ぐんぐんと北上。
その後は近江八幡、彦根、長浜と、歴史の舞台としても有名な町が続く。城や大仏などアイコニックな建物の出現は、実際に立ち寄らずともチェックポイントとして視界に入るだけで楽しい。
途中の休憩は彦根にある「あのベンチ」にて。なんの変哲もない空き地の木の下にポツンとあるベンチだが、湖に浮かぶ多景島を望める絶好のポジションで、ライダーの間でひそかに人気を博しているらしい。確かによい眺め!
長浜を過ぎると向かい風が強くなり一気に減速。これまで時速15〜16kmで走っていたのが、ついには時速10〜12kmほどに……。のちに地元のおじさんに聞けば、このあたりはいつも北からの風が強く吹くエリアで、“岐阜おろし”と呼ぶそうだ。
脚もパンパンになり、つらさピークの夕方。湖に照る夕焼けに心洗われ、もうひと踏ん張り。ルートを少しはずれ、JR高月駅近くにとっておいた宿に辿り着いたのは18時半だった。
ここまでの走行距離は約100km、所要は9時間強なので、休憩を含めた平均時速は11〜12km。だいたい当初の計算どおりだ。
賤ヶ岳を越えて西側へ
2日目は5時50分にスタート。
最初に待ち受けるのは、ビワイチ最大の約280mの高低差。天正11年(1583)に豊臣秀吉が柴田勝家に勝利した戦いの舞台となった賤ヶ岳(しずがたけ)の峠越えだ。
旧道をくねくねと上りきると、昭和2年(1927)築の味わい深いレンガの造りのトンネルがあり、そこを抜けると眼下には湖の雄大な景色が広がる。朝日に照る水面が美しい。
その麓には湖最北端の塩津の町。趣のある木造の家々が並んでいたり、田んぼの畦道を小学生が一列にならび集団登校していたりと、のどかな風景にほっこり。
車通りも少なく、自然に抱かれた気持ちのいいサイクリングで、昨日の疲れも吹っ飛ぶ。
JR湖西線をベンチマークに南下
湖の西サイドに回れば、JR湖西線の線路がベンチマークに。マキノから近江舞子、おごと温泉と、自分が確実にゴールへ近づいていることを教えてくれるよき伴走者だ。
見逃せないのは、高島にある白鬚(しらひげ)神社の湖に浮かぶ鳥居。そして反対側には、次第に青々とした比良(ひら)山地が現れる。
大津の琵琶湖大橋のたもとまでくると、いよいよラストスパート。『道の駅 びわ湖大橋米プラザ』で腹ごしらえし、南へと進む。
堅田(かたた)から坂本エリアは山の斜面の景観がよいルートもあるが、上り坂にビビり、今回は湖に近い北国街道沿いのルートをチョイス。このあたりから次第に人や車通りが多くなり、時おり信号で止まらざるを得ず、なかなか調子がつかめない。もはや迷わず安全に移動するミッションという感じだ。
そしてそして……15時55分、ついに完走!! ぐるりと一周し、レンタサイクルショップへと戻ってきた。お尻は痛いし、ももは筋肉痛で満身創痍ながらも、このうえない達成感! 清々しい気持ちで帰路についた。
ビワイチは、旅としての充実感や自身のチャレンジとしての要素もさることながら、ひと筆書きで湖周辺をめぐるからこそ気づく地理的な特徴、またその地形によって育まれた歴史や文化、気候のグラデーションが見えてきて、とてもおもしろい。
早朝から釣りをしている人や浅瀬で暮らす鳥の大群など、独特の琵琶湖の生態系を垣間見たり。広い空、風、緑、植林、田畑、湖の間で、ひたすらに自身の身体感覚と向き合ったり。普段とは異なる時間が、人生に思い出として深く刻まれる特別な経験を与えてくれたように思う。たった2日間、されど2日間。ぜひみなさんもお試しを!
文・撮影=町田紗季子




