地震、津波、豪雨。3つの災害の怖さを心に刻むツアー

地震で大きく崩れてしまった“軍艦島”の 異名がある見附島。
地震で大きく崩れてしまった“軍艦島”の 異名がある見附島。

2024年元日の地震と津波、9月の豪雨と、3つの災害によって大きな被害を受けた珠洲(すず)市。そこで行われている「復興支援ガイドツアー」に参加してきた。みずからも被災者であるガイドが被災地を案内するもので、2024年7月の開始以来、半年で900人以上が参加、または予約した。

集合場所の見附(みつけ)公園駐車場に行くと、ツアーを主催する「リブート珠洲」代表の篠原和彦さんが待っていてくれた。まずは本日回る場所の紹介を受ける。地震で倒壊した家屋や津波被害跡、仮設住宅、豪雨被害の跡など、珠洲市全域のなかから、参加者の目的などを加味してその日のコースをガイドが決める。

「倒壊した家を見ると、柱から梁が抜けて潰れているのがわかります。柱と梁を金具で留めるとか、筋交(すじかい)を入れることで倒壊が防げたかもしれません」と、被災した建物を見ながら説明を聞けば、耐震補強の重要性を痛感する。

「被災地だけでなく、世界農業遺産にもなっている美しい里海や里山の風景も見にきてほしいです」 と、「リブート珠洲」代表の篠原和彦さん。
「被災地だけでなく、世界農業遺産にもなっている美しい里海や里山の風景も見にきてほしいです」 と、「リブート珠洲」代表の篠原和彦さん。
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全壊した家屋の解体が進む宝立町。 標識も大きく傾いたままだ。
全壊した家屋の解体が進む宝立町。 標識も大きく傾いたままだ。

珠洲市宝立町(ほうりゅうまち)は、地震だけでなく、場所によっては約3ⅿの津波に襲われている。鉄骨がひしゃげた倉庫を指差し、津波によって曲がったものだと説明される。鉄骨は地震には強いが、津波にはひとたまりもないことがわかる。

内陸部や外浦へ向かうと、地震に加えて洪水の被害も目の当たりに。下部がえぐられて斜めになってしまった家や、土石流に埋もれてしまった家々など、無情な景色が広がる。

「普段はあまり聞いてもらえない防災の話も、ここに来て私たちが語ることで、みなさん真剣に聞いてくださいます。立て続けに災害が起こってしまいましたが、それを乗り越えていく、防災の先にある安心安全の住まいを考える場所に、珠洲市がなっていけたらと思っています」

避難所での暮らしや困ったことなど、実際に経験した人から聞く話は重みが違う。現地を目にすることで自分ごととなって、「災害に遭ったら?」と、切実に考えるようになる。

たくさんの気づきや学びを得ることができる、いまここでしか体験できないガイドツアーだ。

『リブート珠洲 復興ガイド支援ツアー』
☎090-2111-1785
9:30~・13:30~(要予約)、所要2時間30分〜3時間。1名2000~5000円(申し込み人数により異なる)
石川県珠洲市宝立町鵜飼見附公園駐車場(集合場所)
北陸新幹線金沢駅からバス2時間3分の穴水駅前で乗り換え、バス55分の珠洲鵜飼下車、徒歩20分。送迎および現地での車移動に関しては応相談。
※最新情報はサイト(https://rebootsuzu.com/)で確認

文・写真=若井 憲