服部樹咲

はっとりみさき/2006年、愛知県出身。映画『ミッドナイトスワン』(2020)でヒロインを演じ、第44回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。2023年は映画『唄う六人の女』のほか、主演短編映画やCMにも出演。ファッション誌などでモデルとしても活動の幅を広げている。2024年12月には、映画『私にふさわしいホテル』の公開も控える。
Instagram:https://www.instagram.com/misaki_hattttori/?hl=ja

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初の明るい役は楽しみでした!

—— 愛知県一宮市がある尾州地域の伝統毛織物、尾州ウールがテーマの映画『BISHU~世界でいちばん優しい服~』。織物工場の娘で、デザインの才能がある高校生・史織を演じました。感想は?

服部 いままでは悩みを抱えている、どこか陰のある役が多かったのですが、今回初めて明るくかわいい役だったので、とても楽しみでした。

プロデューサーが、私のデビュー作『ミッドナイトスワン』と同じ方なので、この作品で新しい一面を見せたい! がっかりさせたくない。頑張るぞ!という気持ちが強かったです。

—— 服部さん演じる史織は発達障がいで、こだわりもたくさんある役柄。難しかった点は?

服部 発達障がいについては、事前に当事者の方たちに、脚本に違和感がないかなども含めて話を聞かせていただきました。本当に無知だったので、勉強になりましたし、役を掘り下げられる貴重な時間になりましたね。

監督からは、史織は発達障がいだから絵やデザインがうまいのではなく、誰しも得意、不得意があるなかで、一人の女の子が得意なことを周囲の人に見つけてもらって自分も努力し、成長していく。そこにフォーカスしたいという話がありました。

史織の特性を頭に入れつつ、彼女の魅力の部分、かわいらしさや愛おしさを表現できるように準備していきました。

—— そんな史織を悩みながらも応援し、支える家族の姿も印象的でした。

服部 どこか私の家族と似ているんです。私にも姉がいて、岡崎紗絵さん演じる姉・布美(ふみ)みたいなんです。チクチク注意したり、お説教したりするけれど、それは私を思ってのことだったりするんですよね。父も、娘が心配ですんなり応援できない、背中を押せないかんじが似ています。

作品のなかで、史織が父親と対峙して「私はこうしたいんだ!」と伝える場面がありますが、私も父と母に、小さい頃から続けてきたバレエをやめて俳優になりたいと、向き合って話をした日があって。初めて両親に話す一声目が、どのくらい震えるのか……みたいなことは実感していたので、史織の心境を理解しながら演じました。

—— ご自身の経験が演技に生きたのですね。

服部 役立ちました。でも私のほうは、両親を説得するのに1カ月くらい粘りました(笑)。そうしているうちに『ミッドナイトスワン』のオーディションの話がきて、合格できて。いまは家族全員、応援してくれています!

—— 父役の吉田栄作さん、姉役の岡崎紗絵さんの印象は?

服部 吉田さんは作品の中では寡黙でちょっと怖いお父さんですが、普段はまったく違って。誰に対しても分け隔てなく、やさしく温かく話をしてくださいました。私、本当は人見知りなんですけど、吉田さんが引っ張ってくださったので、現場はすごく楽しかったです。

岡崎さんは顔が似ているとかではないけど、身長が一緒なのもあり、私の姉に似たものを感じていて。“お姉ちゃん”と思いながら撮影できました。同じ愛知県出身なので「小さいとき、イオンモールによく行ったよね!」って話も。

お互い味噌かつが大好きで、撮影中に岐阜羽島にある『たちばな』というお店に二人とも行っていたことがあとでわかり、「おいしかったね~」って盛り上がりました。

岐阜市内にも店がある『たちばな』の味噌かつ。ロースとヒレが選べ、甘みのある味噌が絶品。
岐阜市内にも店がある『たちばな』の味噌かつ。ロースとヒレが選べ、甘みのある味噌が絶品。

尾州ウールの着心地のよさに感激

—— 映画を見ると、尾州ウールの製造工程もよくわかりました。

服部 尾州ウールって世界三大ウールの一つなんですよね。撮影前に、織物工場で作業されているところを見学しました。生地を織っていて糸が切れてしまったときに、目立たないようにする結び方があるんです。実際にやってみたらすごく難しいんですけど、何回かやるうちにちょっとずつ慣れてきて。

みなさん、細ーい糸が何千本もあるなかから切れているところを見つけて作業されるんです。その姿がすごくかっこよかったです。

—— 尾州ウールの服を着るシーンもありますよね。どうでした?

服部 ウールって、生地が厚くて暖かくて、冬のイメージじゃないですか? でも実はすごく軽くて、サラッとしていて、とにかく着心地がいいんです。7月の「一宮七夕まつり」に出演したときにも、尾州ウールで仕立てた浴衣(ゆかた)を着させていただきました。着る前は、浴衣ってちょっと暑いイメージがあったんですけど、めちゃくちゃ軽くてむしろ涼しい!

—— 印象に残る撮影場所は?

服部 尾州ウールは、仕上げの工程の中に「洗い」の作業があります。撮影でも五条川に入って、織った生地を洗うシーンがありました。水がすごくきれいなんです。暖かい日だったので、ひんやりした感覚が最高でしたね。

尾州ウールの仕上げに必要な「洗い」の作業場面を撮影した愛知県岩倉市の五条川。春には両岸の桜が色を添える。(C)2024 映画「BISHU 世界でいちばん優しい服」製作委員会。
尾州ウールの仕上げに必要な「洗い」の作業場面を撮影した愛知県岩倉市の五条川。春には両岸の桜が色を添える。(C)2024 映画「BISHU 世界でいちばん優しい服」製作委員会。

—— 一宮といえば、モーニング発祥の地とか。モーニングの思い出はありますか?

服部 小学3年生まで名古屋市に住んでいたので、家族全員『コメダ珈琲』が大好き。家から一番近いお店のモーニングによく行きました。東京に住んでいるいまも、よく行きますよ。なんだか落ち着くんです。

コメダといえば、ドリンクに付く豆菓子がありますよね。食べたことがなかったんですけど、この間食べたら「何これ、めちゃくちゃおいしい!」とハマってしまって……(笑)。50袋入りを買って、試験勉強のおともにしていました。

——映画では、主題歌も担当されているんですよね。

服部 踊ることと同じくらい、歌も大好きです。ひとり旅も好きなんですけど、実はひとりカラオケも大好きなんですよ。

主題歌は映画への思いや史織の思いも込めて、レコーディングに臨みました。やさしい、温かい気持ちになれる作品なので、ぜひみなさんに楽しんでもらえたらうれしいです。

この続きはぜひ本誌で
インタビューの続きは『旅の手帖』2024年11月号に掲載されています。気になる方は、ぜひ雑誌を手に取ってみてください。映画の舞台である、一宮を訪ねる旅も案内しています。
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映画 『BISHU ~世界でいちばん優しい服~』

2024年10月11日先行公開、2024年10月18日拡大公開!

(C)2024 映画「BISHU 世界でいちばん優しい服」製作委員会。
(C)2024 映画「BISHU 世界でいちばん優しい服」製作委員会。

尾州ウールの工場を営む家の次女・史織(服部樹咲)は、発達障がいと向き合いながらも豊かな感性をもつ高校生。ある日、史織が描いた服のデザインを見た親友の提案で一宮市のショーに出品することに。東京でデザイナー活動に挫折した姉の布美(岡崎紗絵)は複雑な気持ちを抱え、父(吉田栄作)は心配して出品に反対するのだが——。

監督/西川達郎 脚本/鈴木史子、西川達郎、義井 優 配給/イオンエンターテイメント
出演/服部樹咲、岡崎紗絵、吉田栄作ほか 主題歌/『BISHU』服部樹咲feat.池内ヨシカ

聞き手=岡崎彩子 撮影=逢坂 聡
ヘアメイク=Masaki Sugaya(GÁRA)
スタイリング=阪上秀平
衣装提供:シャツ¥48,400、スカート¥75,900、パンツ¥45,100、シューズ¥19,800/ODAKHA(S&T☎03-4530-3241)

2024年11月号より一部抜粋して再構成