温泉宿のよさは、料理や泉質だけじゃない
特に「ここがいい!」という理由で多かったのは「女将やスタッフの心配りやおもてなし」「露天風呂からの景色」「日常を忘れてゆっくりくつろげる」の三つ。 本誌読者は旅の上級者も多いので、穴場的な温泉宿も挙がるかなと思いましたが、ランキングの上位の宿は全国的にも知られる名宿が目立ち、定番のよさを再認識させられました。 意外に感じたのは、九州の宿がランクインしなかったこと。別府や黒川、由布院など名湯も多いのですが、宿単位で見ると票がばらけてしまい、残念ながらランキングから外れてしまいました。
【第10位】下呂温泉 水明館 (岐阜県下呂市)
日本三名泉の一つ、下呂温泉を堪能できる3カ所の大浴場があり、野趣あふれる野天風呂が自慢。吟味された食事や真心のこもったおもてなしなど、東海随一のクオリティーとスケールを誇る。
☆アンケートの声…「日本三名泉の一つといわれる下呂温泉で、趣の異なる3カ所の大浴場を湯めぐりしたい」「美肌になれると評判なので行きたい」
【第9位】登別温泉 第一滝本館 (北海道登別市)
登別温泉地獄谷の一番近くに立地。男女合計35の湯船をもつ大浴場は豊富な湯量を誇り、日本にある10の泉質のうち5つの泉質を24時間堪能できるのがうれしい。
☆アンケートの声…「5種類の泉質を楽しめて、温泉好きにはたまらない」「部屋でいただける北海道産の旬の食材を使った会席料理がうまい」
【第8位】稲取温泉 銀水荘 (静岡県東伊豆町)
全室はすべて開放的なオーシャンビュー。海の絶景に抱かれながら、自慢の自家源泉や旬の磯会席料理を楽しみ、くつろぎにあふれる一日を送りたい。
☆アンケートの声…「キンメダイの煮付けなど、伊豆の新鮮魚介を使った料理がおいしかった」「相模灘を望む全室オーシャンビューが魅力的」
【第7位】乳頭温泉郷 鶴の湯温泉 (秋田県仙北市)
黒板壁に杉皮葺きの屋根をのせた湯小屋が立ち、混浴露天風呂の風情は郷愁を誘う。雪に包まれる冬は、にごり湯がその青さを際立たせる。季節によって表情を変える景色に魅了され続ける。
☆アンケートの声…「都会の喧騒を忘れさせてくれる秘湯宿」「静かにのんびり過ごせる宿だと聞いたので、泊まってみたい。白濁の湯に浸かりたい」
【第6位】渋温泉 金具屋 (長野県山ノ内町)
国登録文化財の「斉月楼」「大広間」といった昭和初期の建築を中心とする館内、かけ流しの8つの風呂、旧街道の温泉街など、どこか懐かしい温泉旅情が味わえる。
☆アンケートの声…「登録有形文化財にもなっている宮大工が建てたという建物に泊まってみたい」「ローマの噴水を模した『浪漫風呂』に入りたい」
【第5位】四万温泉 積善館 (群馬県中之条町)
元禄7年(1694)創業、「本館」は現存する木造湯宿建築としては日本最古といわれる。ほかに「山荘」「佳松亭」の3つの建物からなり、レトロモダンな「元禄の湯」、四季の移り変わりを感じる「杜の湯」など、趣の異なる温泉に入浴できる。
☆アンケートの声…「夜にライトアップされた建物が幻想的で見とれてしまう」「アーチ形の窓から差し込む光に照らされる『元禄の湯』がよかった」
【第4位】銀山温泉 能登屋旅館 (山形県尾花沢市)
明治25年(1892)創業の木造3階建ての宿。古きよき時代の懐かしさを伝える佇まいが目を引く。源泉かけ流しの温泉と、山形の食材を豊富に使った旬の料理を堪能したい。
☆アンケートの声…「大正ロマンの雰囲気と大自然を感じられる宿に、一度ゆっくり泊まってみたい」「雪の降る銀山温泉の町並みに映える建物が好き」
【第3位】那智勝浦温泉 ホテル浦島 (和歌山県那智勝浦町)
熊野灘の波や風により浸食されてできた洞窟風呂が魅力。勝浦港を囲むように延びた半島全体がこの宿の敷地内で、温泉や客室などいたるところから海絶景が楽しめる。ワイルドさも感じる、洞窟風呂からのダイナミックな太平洋の眺めに心引かれる人が多い。
☆アンケートの声…「狼煙山遊園からの絶景が最高! 」「洞窟風呂の壮大さに圧倒される」
【第2位】長門湯本温泉 大谷山荘 (山口県長門市)
長門湯本温泉の入口付近の音信川沿いに立つ。吹き抜けのロビーラウンジや、川のせせらぎと小鳥のさえずりに癒やされる川床テラスなど、館内は上質で落ち着きある空間に。心安らぐひとときを過ごせると評判だ。
☆アンケートの声…「ゆったりとした時間が流れる客室がよかった」「野趣あふれる露天風呂の雰囲気が抜群」「ロビーから眺める形式に心が落ち着く」
【第1位】 和倉温泉 加賀屋 (石川県七尾市)
明治39年(1906)創業の老舗旅館。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の総合部門で36年連続1位に輝き、おもてなし、料理、施設、企画などそのすべてが高い評価を受けている。そのことから、読者からも“日本一の温泉宿”として多くの声が寄せられた。
☆アンケートの声…「日本一の呼び声高い温泉宿だが、まさにそのとおりだった」「夕暮れの海を臨みながら入る温泉は格別! 」「豪奢な建物など贅沢さがある」「こまやかな心配りとおもてなしに感激」
※令和6年能登半島地震の影響により休館中
文=岡崎彩子、『旅の手帖』編集部 写真=久保貴史、内田 晃、飯豊敏夫
『旅の手帖』2023年1月号より