お好み焼愛好家“タッちゃん”推薦のとっておき3軒
“タッちゃん”こと井上龍也さん
年間400枚以上のお好み焼を食べるお好み焼愛好家。広島お好み焼専用検索サイトの『まいおこ』運営をはじめ、各種メディアでお好み焼の魅力を発信中。
食べている間も鉄板で育って味変
県内にはコンビニの数と同じくらいの店があるという、広島のお好み焼の原型ができたのは、昭和30年(1955)頃といわれる。関西のものとは違って生地と具材は混ぜず、生地の上に具材を重ねて焼くのが広島スタイルだ。
「基本の材料は同じでも、重ねる順番やキャベツの切り幅が違うだけで店の個性が出るのがおもしろい」
そう語るのは、お好み焼愛好家のタッちゃんこと井上龍也さん。ぜひカウンター席で、会話や調理のライブ感も味わって、と続ける。
「食べている間も鉄板の上で育つので、食感や味が変化するのもお好み焼の魅力です」
鉄板上のお好み焼は、ヘラで少しずつ切りながら食べるのが一般的だ。ヘラは5本指で握るのではなく、親指を柄の上に置いて鉄板に押し付け、小刻みに動かすのがコツ。ただし、焼きすぎると硬くなって切りにくいので気をつけて、とタッちゃん。
目の前の調理ショーと会話を楽しみ、舌鼓を打つ。目も心も舌も一度に満たされるお好み焼は、やはり県民熱愛のソウルフードなのだ。
王道の作り方を守りつつ、他店にない独自の工夫も『鉄板焼き・お好み焼き りんご』【広島市】
トッピングや焼き方など新しさを求める店が多いなか、2011年の開店以来、奇をてらわないオーソドックスなお好み焼を提供。ラードの代わりにクセのないグレープシードオイルを使うため、あっさり食べられる。
『鉄板焼き・お好み焼き りんご』店舗詳細
ごろりとした牛肉の圧倒的存在感『しょぶりたけとり』【広島市】
広島では牛のあばら骨についた肉を「しょぶり」と呼ぶ。1頭につき数kgしかとれないこの希少部位に、自家製の太麺とソース、ざく切りキャベツも加わって、食べごたえ十分だ。ホルモンを使った鉄板焼きメニューも豊富。

しょぶりを細かく切らず、大きめにカットしているので、
肉の旨味もしっかり味わえます!
『しょぶりたけとり』店舗詳細
ここでしか出合えない個性的なトッピング『大人のお好み焼き kate-kate』【広島市】
コシのあるオリジナル極細麺をはじめ、卵やキャベツ、魚粉まで素材を厳選し、特製香味油で外をパリッと焼き上げる。こだわりのトッピングは「みんなが好きでわかりやすく、お好み焼に合うもの」をセレクトしている。

ワインを加えたソースが大人の味。
魅力的なトッピングはもちろん、ベースのお好み焼も美味!
『大人のお好み焼き kate-kate』店舗詳細
広島が発祥地の説あり! モーニングなら
戦後間もない頃から続く伝統のモーニング『ルーエぶらじる』【広島市】
2025年の夏で79周年。原爆投下後、不明者の捜索や復興にあたる人や医療関係者のため、利益度外視で提供した朝食は、モーニングサービス発祥との説も。オリジナルブレンドのコーヒーと自家製パンが自慢だ。
『ルーエぶらじる』店舗詳細
瀬戸内の海の恵みとうまい酒
旬の食材と地酒のマリアージュを『料理と日本の酒 石まつ三代目』【広島市】
日本三大酒どころの一つである広島の地に祖父が開いた「酒処石松」を、3代目の大輔さんが継いで改称。約50種の日本酒のうち半分が地元・広島の酒で、瀬戸内海産の新鮮な海の幸など地の食材によく合う。予約がおすすめ。
『料理と日本の酒 石まつ三代目』店舗詳細
バラエティー豊かなご当地麺。個性派ぞろいの麺類も美味
汁なし担担麺も広島発祥。戦後に成長していった麺文化
お好み焼だけでなく、広島には県民御用達のご当地麺も多い。
筆頭にあげられる広島ラーメンのルーツは、戦後の飲食屋台にさかのぼる。中華そばを提供していた屋台の一つに元祖といわれる店があり、その味を引き継ぐ老舗の一つが『陽気』だ。
「豚骨スープですが、ドロドロしていないから子どもからお年寄りまで食べやすいと思います。トッピングにはもやしも欠かせません」と店主の原裕美さん。コクがありつつもさっぱりの濁ったスープが味わい深い。
最近では、辛い麺にも注目が集まる。
昭和29年(1954)創業の中華料理店が提供した「冷麺」が始まりとされる広島つけ麺は、専門店のほかラーメン店や居酒屋でも提供されるほどの人気っぷり。たっぷりの野菜と麺を、醤油ベースの辛いタレでいただく。
いまや全国で人気を集める汁なし担担麺も、実は広島が発祥だ。山椒とラー油の効いたしびれるうま辛さは、やみつきになる。
無類の新しいもの好きでありながら、気に入ったものはとことん愛すのが広島の人々。次はどんな麺料理が生み出されるのか、楽しみだ。
濃厚スープが沁みる、広島ラーメンを代表する店『中華そば 陽気』【広島市】
昭和33年(1958)に屋台からスタートした老舗。豚骨と鶏ガラ、野菜を煮込んだスープは注ぎ足しで守ってきた伝統の味。中細麺によく絡み、チャーシューともやしがその味を引き立てる。広島駅前にも店がある。
『中華そば 陽気』店舗詳細
新鮮野菜とモチモチ麺、辛いタレのハーモニー『広島冷麺・つけ麺専門店 冷(れい)めん家』【広島市】
広島つけ麺の元祖といわれる中華料理店で修業した先代が、夏限定だった冷麺を通年で提供する専門店として昭和60年(1985)に開業。伝統の味を守りつつ、タレに砂糖、塩、添加物を使わないなど、独自性も追求している。
『広島冷麺・つけ麺専門店 冷めん家』店舗詳細
山椒の鼻に抜ける香りとしびれる辛さがたまらない『汁なし担担麺専門 キング軒 本通店』【広島市】
自慢の醤油タレは、山椒のしびれがキリリと鮮烈。その理由はオリジナルブレンドの山椒を、その日に使う分だけ毎朝挽いているから。底のタレが見えなくなるまで、30回以上しっかり混ぜるのがおいしく食べるコツ。
『汁なし担担麺専門 キング軒 本通店』店舗詳細
広島県民、みんな大好き! 変わらない思い出の味『むすびのむさし 土橋店』【広島市】
お弁当で知られるが、店内飲食もでき、うどんとむすびの定食1020円~が好評。うどんは7~8種あり、無臭ニンニクが入った元気うどん850円も人気。うどん、むすびとも単品注文できる。
『むすびのむさし 土橋店』店舗詳細
取材・文=北野真弓 撮影=藤川隆久、福角智江、西田英俊、山本幹生
『旅の手帖』2025年7月号より
いまでは数少ない押し焼きスタイル。
水分をしっかり飛ばすので、テイクアウトにもおすすめです。