今はもう無くなってしまった銭湯「鶴の湯」。私のスマホの中の未整理ストック写真を蔵出しします。
閉店が名残惜しくて、番台さんに「写真撮らせてください」と、お願いしたのでした。

今や、「ネットの投稿にあげていいでしょうか」と尋ねられません。
いま、その銭湯があった場所には、きれいなマンションが立っています。銭湯の記憶はひとかけらも、そこにはありません。

私の「昭和」の記憶をたどる糸口の一つだったのになあ。

横浜市の鶴見区で子ども時代を過ごしたのですが、私が住んでいたアパートにはお風呂が無くて、近所のお風呂屋さんに行っていました。銭湯です。

男湯と女湯を隔てる壁の上のほうはあいていて、
「おとうちゃーん、もう帰るよ」
「石鹸なげてくれー」
なんて、会話を壁越しにしたのが懐かしい。

父が時々、お風呂上がりにリンゴジュースやパンピーを買ってくれたなあ(倹約家の母は買ってくれなかった)。

脱衣所には、大きな体重計があったなあ、大きな鏡も。赤ちゃんを並べて置いておく台があった。かわりばんこに、銭湯に来ているお母さんたちがみていたのだと思う。衣類入れは、あの編んだ籠。

たまに、お風呂場のタイルで、すてーんと滑って、後頭部を打撲したっけ。湯桶は黄色かった。

などなど、この銭湯「鶴の湯」は、懐かしい記憶を蘇らせてくれる、おんぼろな銭湯でした。そして、その、ぼろい感がとても好きだった。

壁の絵はめくれ返っていた。


古いものが無くなるのは、さみしい。