製粉したての地粉の香りにただ恍惚。『蕎楽亭』
ここの凄みは、そばだけでなくうどんの小麦粉も自家製粉するところ。上州の「さとのそら」という銘柄の原麦を製粉し、同じく上州「つるぴかり」とブレンドして喉ごしをプラス。「自家製粉だと、ふすま(小麦の表皮部分)をたくさん入れられて、甘さと香りがたつ麺になる。製粉時は店がパン屋みたいな香りになるよ」と店主・長谷川健二さん。和服美人のように細めで艶やかに光る麺を啜れば、小麦のフレッシュな風味にうっとり。
『蕎楽亭』店舗詳細
毎日食べたい優しい300円うどん『讃岐うどん いわい』
「香川のうどん屋約900軒のなかでも、水回し(小麦粉に加水しこねる作業)から手作業で打ってる『宮武』のうどんに惚れてしまって」と主人の岩井佑介さん。同店で修業した主人が打つ麺はもっちりしなやかで、麺を冷水でしめ熱いツユをかける“ひやあつ”で味わえばコシも増して絶妙食感に。たっぷりのいりこや利尻昆布などでとるダシは食べ飽きない優しい味わい。「うどんは日常食。値段も味も毎日食べやすいものを心がけてます」。
『讃岐うどん いわい』店舗詳細
晩秋の体を温める幸せけんちん!『志な乃』
30年以上続く老舗の看板は、けんちんうどん。「朝から里芋なんかの皮をむいてさ、ゴマ油をひいた鉄鍋で炒めて。そっから鰹節をダーッと入れてじっくり煮込む。だからウチのは具が大きくても味が染みてるの」と女将の恵子さん。具材がゴロゴロ入った白味噌の濃厚ツユは、豪快ながら懐かしい味わいで店主夫婦の人柄のよう。そこに主人・正男さんが打った細めでコシのある麺が絡めば、益子焼の巨大丼も一気呵成に完食!
『志な乃』店舗詳細
麺の求道者がつむぐ新・武蔵野物語『手打ちうどん長谷川』
「一推しメニューを聞かれてもみんな自分の子みたいなもんだから……」とうどん愛を語る店主・長谷川匡俊さん。地粉の農林61号で打った麺を見ると、表面に茶色い粒々が!「ローストしたふすまを入れてるから。ミネラル豊富で香りも高くなるんです」。早速麺を啜れば、小麦の優しい香りは武蔵野風ながら、つるっとした食感は讃岐のよう。「香川の粉もブレンドしてます。武蔵野に讃岐のいいとこを足したうどんが自分の理想ですね」。
『手打ちうどん長谷川』店舗詳細
京の出汁とカリーが結婚した味や!『かれんど』
昭和60年、店主・鈴木寿彦さんは商社マン時代に本場のスパイスや料理に触れ“本物のカリー”を伝えるべく開業。「10年経った頃、白い神様が店の中をふわ~っと通ってな、カリーうどんを作ってみたらって囁(ささや)いたんや」。実は鈴木さんは京都の料理旅館の生まれ。透明感のある京風の出汁をなじみ深いあんかけにし、自慢のカリーと合わせることに。たっぷりのショウガ、桜エビ、鰹節からも味が染み出し、オンリーワンの一杯が完成だ。
『かれんど』店舗詳細
やるきトニーさん、おかわりもう一杯!『やるき』
インド・ニューデリー出身、気軽なやすらぎ処『やるき茶屋』で経験を積んだトニーさんが営む居酒屋。おでん、モツ煮といった定番つまみも、ここではスパイス香る魅惑の味わいに変身。焼きうどんもしかり。うどん専用に調合した約10種のパウダースパイスと、手製の鶏挽き肉入りのカレーペーストを投入。額に汗がにじみだすほどのシャープな辛さが、ビールを加速させる。そして訪れる爽快な疾走感。
『やるき』店舗詳細
精鋭のトッピング揃いです。『お山のすぎの子』
手打ちうどん、北海道・日高の昆布と四国直送のいりこをきかせたダシが評判。創業30年超、「いろいろ試して、合う物のみ残してます」と2代目が語るカレーうどんのラインナップは、モチ、かき揚げ、エビフライ……など独創的な全7種。なかでも、揚げたてサクサクのトンカツ、シャキシャキの千切りキャベツをのせたとんカレーうどんは、コシのあるうどんとの対比が楽しい。濃厚なカレーがひたひたしみていくのも、これまたよい具合。
『お山のすぎの子』店舗詳細
取材・文=鈴木健太、沼由美子 撮影=加藤昌人、オカダタカオ