希少酒と肴の組み合わせの妙『縁(えにし)』
日々入れ替わる日本酒は約90種ほど。岩手県で一番小さな蔵元・吾妻嶺酒造のように、生産量が1万本程度の希少な銘柄も多い。「酸味の強烈な『舞美人』は店の定番。北陸産の海鮮系と相性ぴったりです」と、店主の田所さん。個性が際立つ酒が多いだけに、肴との組み合わせ次第で印象も一変するので、注文時に相談すべし。酒肴の素材選びにもぬかりがない。特に、神奈川・愛媛・五島の漁港からは、鮮度が落ちにくい神経締めの魚を仕入れている。エイヒレならぬエイのレバ刺しが登場することも。季節感と各銘柄との組み合わせを考えた、どんな創作メニューに出合えるか。それもまた、この店を訪れる楽しみのひとつだ。
『縁(えにし)』 店舗詳細
能登が育む美酒佳肴に心ときめく『のとだらぼち』
喧噪を抜け、控えめな看板をたどって下りると、そこは能登の入り口。扱う日本酒は能登の蔵元オンリー。魚介や野菜から、米や肉まで、とにかく能登産にこだわったメニューのラインナップが壮観だ。この日届いたのは総重量12kgの寒ブリ。輪島漁港に揚がったばかりの、まるまる太った天然物である。もちろん刺し身も旨いけど、ここは冷酒とあわせてしゃぶしゃぶに。鰹でとった出汁にさっとくぐらせれば、脂が適度に落ちて旨味が凝縮する。鍋のお供には、酸味と米の旨味のバランスが秀逸で、まろやかな飲み口の「宗玄」を。廃線となった能登鉄道能登線のトンネルを利用した隧道蔵で熟成させた良酒だ。両者が巧みに混ざり合えば、瞬く間に甘い口福が……。
『のとだらぼち』店舗詳細
骨酒の穴子にも職人技が冴えわたる『あなご屋銀座ひらい』
店主の平井良和さんは、寿司屋修業時代に穴子に魅せられ、穴子専門店『日本橋玉ゐ』を仲間と興した人。3年前、銀座の小路で独立した店は、アイデア満載のめくるめく穴子料理で、誰もが舌を巻く。そのなかに、穴子の骨酒が。「そのまま骨酒にしても味が強く出ないんですよね」と、骨付きのまま開いた身を、昆布出汁に漬けてから一夜干しに。それをていねいに炙り、1合につき半身を熱々の燗酒に入れる。すすってみると、上品な旨味がぐいぐいと押し上がり、継酒すれば、酒の色が黄味がかって、味わいもさらに深まる。熱燗のなかでふくよかにふくらんだ身は、しゃぶりつくとふわっふわ。きれいに味わい尽くすべし。
『あなご屋 銀座ひらい』店舗詳細
高級角打ちで銀座せんべろに参戦『銀座 君嶋屋』
銘酒販売店で、一角に立ち飲みスペースを設置。銀座の料理店で出したらこの数倍はしようかという銘酒やワインも角打ち価格でいただける。日本酒飲み比べセット650円は奇跡の価格。おつまみは鯖の燻製、なめ茸&ふきのとうなど酒心を誘う小粋な品がそろう。
『銀座 君嶋屋』店舗詳細
取材・文=木村悦子、佐藤さゆり(teamまめ)、稲葉美映子・今田 壮(風来堂) 構成=前田真紀 撮影=yOU、オカダタカオ、丸毛 透