神楽坂・飯田橋の基礎知識

神楽坂という粋な町名の由来には諸説あるが、坂の途中に高田穴八幡の旅所があり、祭礼のときにこの地で神楽を奏したからという説が有力。明治中期から昭和初期にかけては東京屈指の繁華街となり、花街としても栄え、毘沙門天善國寺の縁日でにぎわった。いまでは雑貨屋やカフェが並ぶおしゃれタウンとなったが、花街の面影を残す家並みが連なり、横丁や坂道などとあいまった風情のある景観をつくり出している。

外濠を挟んだ飯田橋側に目を向ければ、「東京のお伊勢さま」と呼ばれる東京大神宮がある。縁結びの御利益が知られるが、散歩の締めに、伊勢神宮のご加護を祈ってから帰途につこう。

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1 神楽坂通り

人気ショップや飲食店が勢ぞろい

外堀通り神楽坂下交差点から神楽坂上交差点を経て地下鉄神楽坂駅あたりまで続く神楽坂のメインストリート。履物・袋物の『助六』、文具の『相馬屋源四郎商店』、中国料理の『龍公亭』など江戸・明治創業の老舗も多い。月〜土曜の午前中は神楽坂下方面へ、午後は神楽坂駅方面への逆転式一方通行となる。

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2 かくれんぼ横丁

粋な路地に立つ隠れ家飲食店

神楽坂仲通りと本多横丁に挟まれた石畳の路地。黒塀に囲まれた料亭などもあり、花街の面影を残す。「お忍びで遊びに来た人が、見つかりそうになっても、この路地に入ればわからなくなる」というのが名の由来。割烹の『和食 千』、天ぷらの『天孝』など、隠れ家的な飲食店がある。

住所:東京都新宿区神楽坂3
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3 筑土八幡神社

区内最古の石鳥居に歴史をしのぶ

創建は約1200年前。夢で神霊を見た翁が、その存在を感じた松を祀ったのが始まり。後に天台宗の祖・最澄が神像を刻み、祠を建てた。童謡『金太郎』の作曲家・田村虎蔵の碑が立つ。

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4 兵庫横丁

黒板塀と石畳の風情ある景観

左右に老舗の料亭が立ち並ぶ路地。黒板塀や石畳が連なる小道は、映画やテレビのロケでもたびたび使用され、東京都新宿区まちなみ景観賞も受賞している。神楽坂の中でも最も古い道の一つで、かつての鎌倉古道の要衝であり、戦国時代に牛込城の武器庫(兵庫)があったことが名の由来になっている。

住所:東京都新宿区神楽坂4/アクセス:JR総武線飯田橋駅から徒歩4分
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5 毘沙門天 善國寺

7月中旬〜下旬にほうずき市が立つ

文禄4年(1595)、徳川家康から寺地を拝領し、日本橋馬喰町に創建。麹町を経て、寛政4年(1792)に現在地に移転。毘沙門天像は1月の初寅と二の寅、5月・9月の初寅の日に開帳される。

住所:東京都新宿区神楽坂5-36/営業時間:9:00~17:00/定休日:無/アクセス:JR・地下鉄飯田橋駅から徒歩6分
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蕎楽亭

自慢は店主の故郷・会津のソバ

主に福島県柳津町産の玄ソバを使用し、店内の石臼で製粉する。粗挽きの十割そばと、玄ソバのまま引いた田舎そばの二色そば1150円で、2つの風味を楽しみたい。

住所:東京都新宿区神楽坂3-6 神楽坂館1F/営業時間:11:30~14:30LO(月・祝の翌日は昼休)・17:00~20:30LO ※変更する場合もあり。/定休日:祝・不定(月もしくは日)/アクセス:JR・地下鉄飯田橋駅から徒歩5分
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6 宮城道雄記念館

失明を乗り越えた作曲家の生涯

正月の定番曲『春の海』の作曲家であり、箏の奏者としても知られる宮城道雄の業績を紹介する。十七絃、八十絃、大胡弓など宮城道雄が考案した楽器の展示もある。

住所:東京都新宿区中町35/営業時間:10:00〜16:00/定休日:日・月・火・祝(春と夏に休館あり)/アクセス:地下鉄大江戸線牛込神楽坂駅から徒歩3分
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7 【閉店】欧明社リヴ・ゴーシュ

パリの雰囲気が漂う赤と緑の外観

フランス政府公式機関の語学学校内にあるフランス語書籍専門店。作家・川端康成も常連だったという。書籍はフランスから取り寄せもできる。

住所:東京都新宿区市谷船河原町15 アンスティチュ・フランセ東京内/営業時間:10:30〜18:00(曜日により変動あり)/定休日:月・祝・学校休講日/アクセス:JR・地下鉄市ヶ谷駅から徒歩8分
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8 外濠公園

濠や鉄道を眺める桜並木の緑道

かつての江戸城外濠にあたる牛込濠、新見附濠、市谷濠の土手や濠の跡を利用した緑地公園。飯田橋駅付近から四ツ谷駅南側まで約2㎞にわたって続く。国指定史跡に指定。

住所:東京都千代田区富士見2丁目〜紀尾井町/営業時間:園内自由/アクセス:JR・地下鉄四ツ谷駅から徒歩5分、またはJR・地下鉄市ヶ谷駅、JR・地下鉄飯田橋駅からすぐ
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9 東京大神宮

縁結び祈願の参拝者でにぎわう

写真=東京大神宮
写真=東京大神宮

明治13年(1880)に東京における伊勢神宮の遥拝殿として創建され、「東京のお伊勢さま」と呼ばれ親しまれている。また、結びの働きを司る造化の三神をあわせ祀り、神前結婚式創始の神社であることから縁結びの御利益で知られ、全国から多くの参拝者が訪れる。

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【街探検】横丁と坂の街

横丁や坂道の名前から往時の様子に思いを馳せる

芸者小路。
芸者小路。

かくれんぼ、みちくさ、見番、兵庫、芸者小路、神楽小路……。何やら物語にでも出てきそうな小粋な名前は、いずれも神楽坂にある横丁・路地の名前だ。

そして、メインストリートである神楽坂を筆頭に、軽子坂、地蔵坂、逢坂、瓢箪坂、御殿坂など坂道も多い。つまり、神楽坂は横丁と坂の街といえる。

神楽坂通りから筑土八幡神社に向う通りは本多横丁。江戸時代後期から明治時代まで福井藩家老・本多対馬守の屋敷があったことが名の由来。本多横丁と神楽坂仲通りを結ぶ小道はかくれんぼ横丁。料亭街に鍵形に通じる道で、先を行く人が曲がると姿が見えなくなる。

毘沙門天善國寺の前の石畳の道は兵庫横丁。縄のれんを下げる居酒屋や黒板塀の料亭などがあり、風情のある景観をつくり出している。

神楽坂通りから小栗横丁に下る坂道は芸者小路。見番横丁に通じる道で、名前からもこのあたりが花街であったことがわかる。近くに熱海湯という銭湯があることから熱海坂、カラン坂と呼ばれることもある。

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取材・⽂・撮影=アド・グリーン
『街がわかる 東京散歩地図』より