工員たちの空腹を満たしてきた極太麺と濃い口スープの背脂ラーメン

「一麺入魂」という言葉は、創業者のラーメンにかける想いを表したもの。
「一麺入魂」という言葉は、創業者のラーメンにかける想いを表したもの。

新潟県燕市や隣接する三条市は洋食器や金属加工産業が盛んで、工員たちは出前のラーメンをよく食べていた。出前をしても麺が伸びにくいように、小麦粉は強力粉を使って極太にし、出前をしてもスープが冷めないように背脂で丼を覆った。これが燕三条ラーメンの始まりだ。

『らーめん潤』の本店である『酒麺亭 潤 燕本店』は、1992年の創業。当初は自宅を改築した7席だけの店だったが、今では全国に11店舗の系列店をもつまでになった。

2005年、燕三条背脂ラーメンの東京初進出店として『らーめん潤』が開店した。インパクトのあるラーメンはかなり話題を呼び、燕三条ラーメンの名を広めるきっかけにもなった。

丼を覆うチャッチャした背脂。脂好きなら背脂増量もОK!

寸胴鍋に浮かぶ背脂。スープを吸って、旨さが増す。
寸胴鍋に浮かぶ背脂。スープを吸って、旨さが増す。

豚の背脂は、水から約3時間煮込むことで臭みが消え、背脂の旨味が凝縮した味となる。下ごしらえをした背脂は、スープが入った寸胴鍋に入れる。注文が入ると、まず丼にスープを張り、麺を入れた後、寸胴鍋に浮かんだ背脂をひしゃくですくい、丼の上でザルで濾す。このとき、背脂を振りかけるようにする様子からチャッチャと呼ばれるようになった。

でき上ったラーメンは、背脂が丼の表面を覆い、麺は見えない。かなり脂っこく、くどい味を想像するが、食べてみれば見た目ほどのしつこさはなく、脂の旨味や甘みを感じる。

背油をチャッチャ。
背油をチャッチャ。

背脂の量は、スープ一面に背脂が広がったものを標準とし、1.5倍の中油、2倍の大油、4倍の鬼油、そして少な目の小油と、好みで調整してもらえる。鬼油のみ有料(120円)だが、ほかは無料なので、脂好きなら中油や大油にチャレンジしてみるといい。

雪のように降り注ぐ背脂が丼の表面を覆う。
雪のように降り注ぐ背脂が丼の表面を覆う。

本店から毎日クール便で届く麺やタレを使い本場の味を再現

製麺業も営んでいる燕市の本部から毎日、直送される極太麺。
製麺業も営んでいる燕市の本部から毎日、直送される極太麺。

麺やタレ、メンマは、毎日、本店からクール便で運ばれる。「雪などで配送がストップすると営業できません」と笑う店長の小川英祐さん。

極太麺は生麺の状態で約250gあるのでボリューム満点。茹でるのに約7分かかり、調理時間を加えると10分ほどになる。
ラーメン店で10分の待ち時間は長い。小川さんはそう考えた。

そこで、券売機で買った食券は、入り口部で受け取り、客が席に着く前に注文を通すようにしたという。これだけで2~3分の短縮になる。だから、太麺の店にありがちな待ち時間のストレスはほとんど感じない。

店内は長いカウンター席のみ。客が来店すると最奥部の調理場まで注文の声が響く。
店内は長いカウンター席のみ。客が来店すると最奥部の調理場まで注文の声が響く。

スープは豚骨、鶏ガラに加え、ウルメイワシの煮干しを大量に使う。この煮干しが、燕ラーメン特有のコクのある風味を与えるのだ。

朝7時からスープの仕込みにかかり、出来上がるのは12時間後。これを一晩寝かせて、翌日に使う。丁寧に、ゆっくり時間をかけて旨味を抽出するから時間がかかるのだという。

このスープと本店から直送されるタレを合わせてスープが完成するわけだ。

調味料やトッピングで味変すれば、旨さも倍増!

中華そば。刻み玉ねぎがシャキシャキの食感を与えたてくれる。
中華そば。刻み玉ねぎがシャキシャキの食感を与えたてくれる。

基本メニューである中華そば850円の具は、豚バラ肉を使ったチャーシュー、メンマ、刻み玉ねぎ。そして岩のりをトッピングするのがこの店の特徴でもある。

燕三条背脂ラーメンは、味が個性的なので、途中から味の変化が欲しくなることがある。そんなときはテーブル上にある調味料で味変を。
おろしニンニク、柚子こしょう、白こしょう、黒こしょう、一味唐辛子、麺タレなどが並ぶが、小川店長おすすめの味変アレンジは「柚子こしょう」とのこと。

中華そばに、岩のりとチャーシューを増量し、煮玉子を添えた、全部のせの「〇得ラーメン」1100円。
中華そばに、岩のりとチャーシューを増量し、煮玉子を添えた、全部のせの「〇得ラーメン」1100円。

さらに煮玉子、玉ねぎ、岩のり、辛ねぎ、辛味噌、旨辛もやしなどのトッピングメニューも豊富で、これらをチョイスすれば、自分好みの味にアレンジできる。

住所:東京都大田区蒲田5-20-7/営業時間:10:00~翌2:00(金・土は~翌3:00、日・祝は~24:00)/定休日:なし/アクセス:JR・私鉄蒲田駅から徒歩3分

取材・文・撮影=塙 広明