谷中・根津・千駄木の基礎知識

通称・谷根千と一括りにされるこのエリア。谷中は谷中霊園を中心とした寺町であるとともに、夕日の名所「夕やけだんだん」の坂下には昭和レトロな商店街・谷中ぎんざが広がり、静けさとにぎやかさを併せもつ街だ。千駄木は、夏目漱石や森鷗外、5代目古今亭志ん生など多くの文人墨客をはじめ、実業家も多く住んだ高台の住宅地。一方の根津は、根津神社の門前町として栄えた。江戸時代には根津遊郭もでき、明治時代には文豪の坪内逍遥も学生時代に足しげく通い、後に根津遊郭の遊女を妻に迎えたという。3つの街が三様の面白さをもったこのエリア、散歩にはうってつけの人気エリアなのである。

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1 朝倉彫塑館

こだわりの建物と庭園を

彫刻家・朝倉文夫のアトリエ兼住居だった建物で、敷地全体が「旧朝倉文夫氏庭園」として国名勝に指定。「大隈重信像」「墓守」といった代表作品などを展示している。

住所:東京都台東区谷中7-18-10/営業時間:9:30~16:30(入館は~16:00)/定休日:月・木(祝の場合は翌平日)・展示替え期間/アクセス:JR・私鉄日暮里駅から徒歩5分
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2 谷中ぎんざ

昭和の風情を色濃く残す商店街

全長約170m、肉や野菜、衣料、雑貨、カフェなど個性派の約60店舗が並ぶ谷中銀座商店街のこと。日暮里側の入り口となる階段は「夕やけだんだん」という夕日の名所で、谷中の代表風景だ。

住所:東京都台東区谷中3-13-1/アクセス:JR・私鉄日暮里駅から徒歩10分
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3 旧安田楠雄邸庭園

大正・昭和期の山の手住宅と庭園

実業家・藤田好三郎によって大正8年(1919)に建てられた近代和風建築の邸宅。関東大震災後、旧安田財閥の安田家の所有となった。応接間や「残月の間」、客間に贅を凝らした意匠を見ることができる。

住所:東京都文京区千駄木5-20-18/営業時間:10:30〜15:00/定休日:水-土のみ開館/アクセス:地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩6分
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4 根津神社

鮮やかな朱塗りの建造物が壮観

約1900年前に創建。宝永3年(1706)に徳川5代将軍家綱が造営した本殿、幣殿、拝殿、唐門など7棟が国の重要文化財。徳川6代将軍家宣が寄進した大神輿3基が現存する。

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5 菊寿堂いせ辰谷中本店

菊寿堂いせ辰谷中本店

元治元年(1864)創業の江戸千代紙・おもちゃ絵の専門店。1000種類にもおよぶ色鮮やかな江戸千代紙やおもちゃ絵のほか、江戸の粋なデザインを施した和文具や張り子なども販売。

住所:東京都台東区谷中2-18-9/営業時間:10:00〜18:00/定休日:無/アクセス:地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩5分
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6 観音寺築地塀

寺町・谷中の面影を伝える風景

慶長16年(1611)創建で、赤穂浪士ゆかりの寺院。築地塀は境内南面に約38m続く練り塀で、瓦と粘土を交互に何度も積み重ね漆喰で仕上げている。国の有形文化財に指定される。

住所:東京都台東区谷中5-8-28/営業時間:境内自由/アクセス:JR日暮里駅・地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩6分
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7 谷中霊園

春の桜のトンネルが覆う園路が美しい

幸田露伴の小説『五重塔』のモデルとなった五重塔跡があった場所であり、中央園路は通称「さくら通り」と呼ばれる桜の花名所となっている。渋沢栄一、“明治の毒婦”高橋お伝の墓などもある。

住所:東京都台東区谷中7-5-24/営業時間:入園自由/アクセス:JR・私鉄日暮里駅から徒歩6分
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カヤバ珈琲

昭和風情が残る、谷中の人気カフェ

大正時代築の古民家を活用したカフェ。昭和13年(1938)創業で一度は閉店したが、2008年に復活した。人気のたまごサンドは、甘い厚焼き玉子を挟んだもので、ふんわり食感もたまらない。

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8 下町風俗資料館付設展示場

酒類販売の道具や資料も公開

江戸時代より、谷中6丁目で代々酒屋を営んできた吉田家の建物を移築。明治43年(1910)築の出し桁造りの建物は、江戸中期から明治時代の商家建築の特徴を随所に見ることができる。

住所:東京都台東区上野桜木2-10-6/営業時間:9:30〜16:30/定休日:月(祝の場合は翌平日)
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根津 釜竹

銘酒と手打ちうどんに舌鼓

大阪に本店をもつ釜揚げうどんと日本酒の店。明治43年(1910)に建てられた石蔵を移築し、建築家・隈研吾さんにより改装された。釜揚げうどん850円、日本酒グラス900円〜を味わえる。

住所:東京都文京区根津2-14-18/営業時間:11:30~14:00・17:30~21:00(日は11:30~14:00)/定休日:月/アクセス:地下鉄千代田線根津駅から徒歩5分
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取材・⽂・撮影=アド・グリーン
『街がわかる 東京散歩地図』より

いまや東京を代表する散歩スポットととなったこのエリア。江戸時代からの寺町および別荘地と庶民的な商店街を抱える「谷中」、夏目漱石や森鴎外、古今亭志ん生など文人墨客が多く住んだ住宅地「千駄木」、根津神社の門前町として栄え一時は遊郭もあった「根津」。3つの街の頭文字をとって通称「谷根千」。わずか1.5キロ正方ぐらいの面積に驚くほど多彩な風景がぎゅっと詰まった、まさに奇跡の街なのである。